ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.27

クリエイティブモードにロックオン

オリンピック、パラリンピック共に無事終了。
なにはともあれ、よかったよかった。
東京は東京としての使命を、どうにかこうにか果たし終えたこのタイミングで
季節は夏から秋へと装いを変えようとしているこの九月に、
いよいよ、新たなステージへの予感が差し迫っている。
それがいい予感であれ、悪い予感であれ、
すべては神のみぞ知る。
そして、すべては個の思いのアパリシオン(現れること)にすぎず、
それを決定するのは他でもない自分自身。

世の動向は、いまだ不透明ではあるものの、
それでも、何かが少しずつ変わっていっているのを肌で感じ取っている今日このごろ。
毎年、この時期から、俄然気持ちがみなぎりはじめ、
意欲が増してくるのが、自分にとっての九月であり、
残された4ヶ月で、まだなしえなかったことに、
改めて向き合って実りある年末を迎えたいと思う。
ラストスパートへの助走というわけだ。

いずれにせよ、世の中のこの急激な変化、
そして、来るべき時代の主役は、まぎれもなく自分自身なのだ、
という自覚をつよく持って、
あくまで、その移り変わりの波に飲まれぬように、
乙女のごとく、感覚を研ぎ澄ましているところである。

文化の側面でいうならば、素敵なモノが目白押しで
ただただひたすら傍観者として、やりすごすのではなく、
自らもその輪のなかにとびこんで
今一度なにかの一翼を担っていたい。
目指すはクリエイティブ回帰。
改めて、創造の女神の微笑みに誘われて、
あらがえぬ美の魅力に立ち返って、寄り添ってゆきたい。

ちょっと抽象的な感覚だけど、
今回は、ぼくが考えるクリエイティブ特集というわけで、
さあさあロックオンとまいりましょう!

The Elvin Suite: Charlie Watts Jim Keltner project

先日、ストーンズのチャーリー・ワッツが亡くなった。
僕がよく聴いているラジオ番組でも当然、追悼の曲がたくさん流れていた。
僕自身は、さほど、ストーンズに思い入れがある方じゃないし、
チャーリー・ワッツについて、あれこれウンチクを語れるほど、聴いてきたわけでもない。
もちろん、ストーンズは好きだし、普通に聴いているし、好きな曲もいっぱいある。
で、一番大好きなアルバムは1969年の『Let it Bleed』なんだが、
その中でも大好きな「You Can’t Always Get What You Want(邦題:無情の世界)」を
ここで追悼に、と考えたけど、実はこの曲はチャーリーではなく
プロデューサージミー・ミラーが叩いている曲で、
ミック曰く、「チャーリーはこの曲独特のグルーヴに合わない」とのことらしい。

そんなわけで、他の曲を探すこともできたけど、
ちょうど2000年に、同じドラマーのジム・ケルトナーと出した
『Charlie Watts Jim Keltner project』のことがふと頭に浮かんできて、
聴き直していたら、これが実に面白かった。
ストーンズとは全く違うアプローチで、純粋なストーンズファンにしてみれば、
あんまり支持できないかもしれないけど、
サンプリングやプログラミングを駆使して、リスペクトするジャズ・ドラマーへの
トリビュート・アルバムをやっているあたりがニクい。
実に新しく新鮮なことをやってるなあ、と感心したのであった。
で、もともとチャーリーはジャズ志向の強いミュージシャンだし、
その人が入ったバンドが、たまたまストーンズという最高のロックバンドだっただけ、
ってな感覚だったような人だから、別におどろくことではないのかもしれない。

ということで、ちょっと長くなったけど、今回の「特集:クリエイティブ」に先駆けて、
チャーリー・ワッツのクリエイティブな一面をクローズアップする形で、
これを改めて追悼の一枚、一曲とさせていただこう。
「MAX ROACH」「ART BLAKEY」と最高にかっこいいグルーブの曲もあって迷ったけど、
ここはクール&エモーショナルでしかも秋らしいエルヴィン・ジョーンズに向けた
「The Elvin Suite」ってことにしておこうか。
ストーンズで一番まじめで紳士的だったチャーリーが
こんな、実に実験性に富んだことをやっていたことに
あたらめて感動を覚えるんだよな。

特集:夢見る乙女のごとし、クリエイティブ回帰大作戦

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