ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.13

酒とちゃんこと稽古と伝統の陽の下に磨き抜かれた力士たちの肉体を前に
詩人ジャン・コクトーは「桃色大理石の神々」と呼んだ。
なるほど、うまいことをおっしゃるものだ。
さすがは詩人である。

そんな機知に富んだセンスにならいて
「シルクの柔肌に身を包んだ桃色女神たち」とでも呼びたくなるのが、
日活ロマンポルノと言う、自由でカオスな映画空間に
その惜しみなき姿と、時に観音的とさえ呼びたくなる
慈愛に満ちた眼差しを晒してきた我が裸のミューズたちである。
その官能的な艶姿を焼き付けた記憶を、
今、まさに春到来の気配を一身に浴びながら
ここで回想し、讃えていこうと思う。

名付けて「我が眼差しの観音へのテロル、日活ロマンポルノ特選』。
日活ロマンポルノと一言で言っても、玉石混交であり。
一般の劇映画に勝るとも劣らない傑作から、
箸にも棒にもかからない駄作、と言うか
単に、カビた暗闇を寝床とする野犬たちのおかずにもならない
すえた場末の掃き溜めのような欲望の垂れ流しに至るまで、
そう簡単には語り尽くせない、実に豊かな映画的空間がひしめいているのである。

そこで、僭越ながら、我が偏愛的ロマンポルノ10選をここに
リスト化すると言う、いささか乱暴な企画を特集として書いてみたい。
幸い、ロマンポルノのアーカイブにはなかなかの隠れた名作たちが
宝石のようにゴロゴロと転がっている。
はて、何をみていいのやら、と言う、魂の童貞たちがいるのならば、
これだけは、騙されたと思ってみてちょーだい、
ってな調子で、ここに独断と偏見のみで
その名作のほんの一部をこっそりと紹介したいと思う。
ただし、間違っても通俗的なAV感覚を期待しても虚しいだけの、
純然たる映画であることは、野暮ながら強調しておく。

よって、これをもってエロティシズムの名を引き合いに出すことにも
いささかのためらいがあるのだ。
それが果たして、エロスなのかどうか、
自分の目で確かめてもらうほかないのだが、
エロスはエロスとして、また別の機に考察して見るつもりだが、
ポルノだからと言って、必ずしもエロティシズムに直結するわけではないのである。
ただ、そこに女の裸があり、
男と女の睦みごとが10分に一度程度、必ず視線に晒されると言うゲームなのだ。

そんな小難しいことはさておき、日活ロマンポルノは
わずか70分程度の尺の中に、一定のお色気を含むと言う規定以外は
実に自由で、奔放な映画作りの情熱に突き動かされた、
真の映画狂たちが集う実験の場でもあったのである。
その熱気は男と女の睦みごと以上に熱く、狂わしいものだ。

当初は、指おり数えるのに少々時間を要したものだが
色々、再考するうちに、10本程度では収まりきれぬと言う事態が明らかとなり、
嬉しい悲鳴とともに、女に目覚めたばかりの少年のような気分で
胸を一身にときめかせながら、
第一弾、我が裸のミューズたちへの思いを自分の言葉で語ってみよう。
気が進めば、いずれ、第二段、第三段へと鼻の下ならぬ、
手を伸ばしてみようとは思うが、まずは入門編と言うことで、
そのラインアップをご紹介しよう。

我が眼差しの観音へのテロル、日活ロマンポルノ特選

  1. 赫の他人の睦みあい・・・神代辰巳『赫い髪の女』をめぐって 
  2. 不思議の国のヰタン・セクスアリスここにあり・・・曽根中生『わたしのSEX白書 絶頂度』をめぐって
  3. 地獄にて戯れる、少女たちの復讐のエロス・・・小沼勝『少女地獄』をめぐって
  4. デキる男は指上手・・・村川透『白い指の戯れ』をめぐって
  5. 復讐には天使の優しさを・・・田中登『真夜中の妖精』をめぐって
  6. 海と女体と映画館、そして唄。それだけあれば映画ができる・・・神代辰巳『恋人たちは濡れた』をめぐって
  7. 観音か官能か、ツボにハマって元祖SMクイーンに悶える季節・・・小沼勝『花芯の刺青 熟れた壺』をめぐって
  8. やっぱり、コレ、凄いんです・・・曽根中生『ためいき』をめぐって
  9. 肉を縛って、心を放つ男と女のリビドー道巡り・・・小沼勝『花と蛇』をめぐって
  10. 行くも業、行かぬも業。所詮業から逃げられぬ女地獄のせめぎ合い・・・田中登『㊙︎女郎責め地獄』をめぐって

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