田中登『㊙︎女郎責め地獄』をめぐって
行くも業、行かぬも業。所詮業から逃げられぬ女地獄のせめぎ合い 趣ある本物の浄瑠璃を伴って、のっけからなんとも風情漂う石畳の上に書かれたクレジットがいい。真っ赤な字のタイトルは『㊙︎女郎責め地獄』カメラが真俯瞰で追いながら...
行くも業、行かぬも業。所詮業から逃げられぬ女地獄のせめぎ合い 趣ある本物の浄瑠璃を伴って、のっけからなんとも風情漂う石畳の上に書かれたクレジットがいい。真っ赤な字のタイトルは『㊙︎女郎責め地獄』カメラが真俯瞰で追いながら...
復讐には天使の優しさを 手持ちカメラが新宿の飲み屋街を徘徊する冒頭「う~たぁをわ~すれたぁ~ カ~ナリヤはぁ~」という呪文のような歌のリフがかさなってきて、のっけから頭から離れなくなる。 田中登の『真夜中の妖精』を見終わ...
ラストシーンは驚くほど能天気な執行猶予付きのカップルが 颯爽と自転車で楽しげに並走して終わる。 この無常観は、風呂場でいとしげに死体を清めた 室田日出男の哀しさとは真逆のものである。 快楽と無軌道は唐突なことで日常を揺るがすものだが、 といって、誰もがそこで立ち止まることはない。 川の流れのように続いてゆくのだ。 やるせない気だるさだけがそこにある。 そうした空気が全身にまといついて離れない。 ちょっとした衝撃を受けた。
その芹明香演じる十九ピチピチの若く蓮っ葉な娼婦が、 日夜たちんぼうをしながら、男を漁り渡り歩くわけだが、 ギラギラ夏の太陽が照りつける大阪のドヤ街の片隅で 「うちなぁ何か逆らいたいんや」 そう呟くオープニングシーンのふてぶてしくも、 たくましさと気だるさとともに、思わず視線に緊張が走る。 けれども一時間強のドラマを観終わった後には そんな彼女が実に愛おしくなってくるのだ。