チルアウト続編ということで。
アンビエントが必ずしもチルアウトかというと
そういうものでもないし、
ロックやポップミュージック、
あるいはクラシックやジャズの中にでも
十二分にチルな要素のあるものもある。
そこから拡張してラウンジと呼んでもいいし
なんならモンドミュージックと一括りにしてもいいのだが
問題はそんなところにはない。
心地いいということに理屈はいらないわけだ。
そこが音楽の素晴らしさであり、暑さから逃れうる
一つの音楽体験と呼んでいる所以なのだ。
だから、想像力の欠乏した人間はこの暑さを受けて
絶えず身体的な冷却にばかり囚われてしまうだろうが、
こっちは脳内の温度設定に非常に敏感になっているわけである。
それを便宜上チルアウトと呼んでいるに過ぎない。
なのでここで語る音楽はすべてそういう観点から聴いている。
相矛盾するかもしれないが
チルアウトで熱くなってしまうことだってあるってわけだ。
我が家のチルアウトミュージック定番セレクション:其の弐
Chill Out:The KLF
チルアウトというと、真っ先にこれが頭に浮かぶ。
現れたるは一見偉大なるピンク・フロイドの「原子心母」を
カムフラージュしたかのような雰囲気に見せ掛けて、
だが表層のパロディ感覚など
いとも簡単にすり潰してしまうかのようなインパクト
(ときにホーミ-やらエルビスやらをちりばめ)さえ感じさせる、
牧歌的な要素こそ堂々継承も、
まさにチルアウトの傑作(そのままやん)。
ビートに疲れの、ヒートに憑かれの、
で、このチルアウトに漬かれし音楽。
なにはともあれ、気持ちがいいということは何物にも代えがたい。
Musicaelettronica Volume Uno :Piero Umiliani
イタリア映画音楽界の土壌はかくも豊穣で
“マナ・マナ”で知られる
ウミリアーニの電子音楽のコンピレーションは
その意味では、その奥深さ、実力のほどを証明している。
ジャズというかファンクというかフュージョンサウンドを
シンセの音色、演奏でもってエキゾ・チューンに変えてしまう
ウミリアーニの柔軟な感性がいやはや素晴らしいでござる。
Sesso Matto:Armando Trovaioli
そのウミリアーニの師匠であるのが
このアルマンド・トロヴァヨーリであります。
約200本もの作品のスコアを担当。
まさに巨匠、マエストロ。
「性」と「狂気」の合成語である『Sessomatto・セッソ・マット』は
ディーノ・リージ監督によるオムニバス映画であるが残念ながら未見。
音だけが先行しているがそれでも十分に楽しめる内容だ。
Concorde:The Modern Jazz Quartet
モダンジャズとはよくいったもので
ミルト・ジャクソンの演奏するビブラフォンの
この洗練されたクールな響きはウルトラモダン。
そのままチルアウトと呼んでも一向に差し支えない音になっている。
ジョン・ルイスのピアノ、パーシー・ヒースのベースにコニー・ケイのドラム。
そして自由に、かつ格調高く駆け巡るミルト・ジャクソンのバイブ。
都会的なラウンジジャズの古典と言ってもいいでしょう。
Cochin Moon:細野晴臣
このセレクトで、細野晴臣をスルーするわけにもいかず、
と言って、トロピカル三部作に容易に頼るのもなんだし・・・
何か気の利いたものはないかと思い巡らせると
このアルバムがあったことを思い出した。
画家の横尾忠則とのコラボと言っていいものか。
横尾さんはYMOの初期メンバーの予定になったいたという
驚くべき裏話があるほどで
ハリー細野をスピリチュアルな道へと誘った張本人でもある。
共に旅したインドの旅行記の意味があるアルバムだが
あえてセレクションに加えておこう。
Take Off And Landing:砂原良徳
電気グルーヴの“まりん”こと、
砂原良徳の1998年発表の”2ndアルバム
架空のエアポート東京アンダーグラウンド・エアポート(TUA)を出発して
僕らはどこへ向かうのか?
どこに誘ってもらえるのか?
ラウンジ旅行の素敵な空間移動を経て
音から音へと流れてゆくこのイマジーネーション満載の音の旅。
再び東京へ舞い戻って僕らは一路夢の中へと突入して
新たな旅の準備に入る。
そんなナイスでセンスある一枚だ。
縄文頌:YAS-KAZ
舞踏集団山海塾のための書かれた舞踏音楽。
第三世界的な音の構築、プリミティブでありながら
身体の躍動感と官能性を導く肉体を宿したYAS-KAZの音を、
生の舞台で聴けなかったのは残念。
だが、その息づく音の力は縄文の時空ヘと誘ってくれる。
この音楽を疲れた現代人に、
そして縄文への郷愁を太郎岡本に捧げよう。
VIVA CUGAT! / THE BEST OF CUGAT:XAVIER CUGAT
初めてザビアク・ガートを意識したのは
映画ウォン・カーウァイの『欲望の翼』を観たときからだ。
見るからに蒸せ返る亜熱帯の密林を俯瞰する映像をバックに流れる
この優雅でエキゾチックなザビアク・ガート楽団のナンバーは
最高にお洒落なムードで包み込んでくれたものだ。
音楽だけでも十分にその雰囲気に浸れるだろう。
The Colors Of Brazil African Blue:Les Baxter
マーティン・デニーと並ぶエキゾチカの雄レス・バクスター。
マーティン・デニーの演奏で知られる「QUIET VILLAGE」は
実はバクスターの曲だったりする。
とにかくどのレコードもジャケットが秀逸で
眺めているだけでも十分に楽しい。
これは「アフリカン・ブルー」と「カラーズ・オブ・ブラジル」のカップリング盤CDになっていて、
二度美味しいアルバムになっている。
Dream Theory In Malaya:Jon Hassell
ジョン・ハッセルは、先ほど追悼記事も書いたし
なんども取り上げていて、重複するけど、
このチルアウト企画にはやっぱり不可欠ということで再度あげておく。
このトランペットの音は何度聞いても独特。
ちょっと変わった音で、全く違う楽器みたいだった。
ジャズのファンキーラインとは無縁の肉感的で、ぞくぞくする音を奏でる。
耳にしていたのはイーノセンセイとの絡みが多かったけど
80年代以降は唄ものとの共演が増えて、その良さが広がったと思う。
ソロとしてはこれがベスト、かな。
パーカッションとのからみが絶妙でSEなんかの使い方も面白い。
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