素敵なパンを召し上がれ

たとえば、君ってドラム缶みたいなやつだな、なんていわれたら
なに? あたしゃそんなに寸胴で、デブかよっ、てなことで、
そりゃあ冗談でもだれだって傷つきますよね。

ショーケンと水谷豊のコンビで知られる
70年代を代表するTVドラマ『傷だらけの天使』のオサムとアキラは
代々木の雑居ビルの屋上のペントハウスに住んで、なんと風呂がドラム缶だった。
最終回で、肺炎をこじらせて死んだアキラをそのドラム缶風呂につけ
「女、抱かしてやっからな」と泣きながら
雑誌のエログラビアで弔うショーケンがなんとも愛おしかった。

主に燃料や工業製品の貯蔵、運搬に使われるそのドラム缶で、
こんな素敵な音色が出ると知ったら
きっとイメージは変わるはず。
西洋の楽器にくらべると、実に異質というか、
なんだか実におおらかで、開放的な音色がするスティールパンの響き。
このトロピカルミュージックにふさわしい楽器とはいうものの、
大量生産もできないし、しかも調律には専門の調律師がいるほど
チューニングが実に難しい楽器なのです。

カリブ海の島国トリニダード・トバゴ共和国で発明された楽器で、
国民楽器に認定されているほど、浸透している。
トリニダード・トバゴのポートオブスペインで毎年行われるカーニヴァルでも
多くのスティールパン奏者が参加し、賑わいをみせるというが、
近頃では、いろんなポップ・ミュージックの楽曲のなかからも
頻繁に聞こえてくるようにようになった。

ただ、まるまるスティールパンだけで作られたアルバムを探すのは困難で、
ヤン富田の「ミュージック・フォー・アストロ・エイジ」ぐらいしか思いつかないが
ここでは、スティールパンを効果的に使った楽曲を選曲してみよう。

トロピカルなパンの響きがするプレイリスト

We Travel the Spaceways:ヤン富田

日本のスティールパン第一人者であるヤン富田のソロアルバム『 Music for astro age』からの一曲。エクスペリメンタルで、コズミックで、モンドで、トロピカルで、ポップ。すべてを兼ね備えた音楽がここにあります。

Liberty City :JACO PASTORIUS

ビッグバンドのなか、水を得た魚のように、とはこのことで、いきいきしたジャコのベースの合間を縫って、ジャズテイストのスティルパンのキラキラした音色まぶしいサウンドが堪能できる。演奏はオセロ・モリノー。

BE CAREFUL :VAN DYKE PARKS

スティール・パンを語るに、この人、このアルバムは外せません。ヴァン・ダイク・パークス の 『Discover America』から。この時期、カリプソに傾倒していたVDPの趣向そのままアルバムに仕上がっていると同時に、その分、アメリカという国の抱える矛盾に対するアンチテーゼが潜んでいるような気もします。自分たちの尊厳、文化を断ち切られたアフリカン・アメリカン達が生み出した音楽への賛歌と申しましょうか。

NABI’S NAPPING:村上“ポンタ”秀一

1978年リリースの、村上“ポンタ”秀一の幻のセッション・アルバムは、日本のジュージョンの最高峰の凄腕フュージョンミュージシャンが結集した名盤だが、このアルバムからわざわざ取り上げたのは、そのスティールパン奏者が、なんと細野さんだということだ。器用にこなす腕もさすがだが、こういうタイプの音楽にも難なく順応する細野さんを改めてリスペクトしたい。

Pride:Robert Palmer

通算7名目の『PRIDE』からのタイトルチューン。地味ながら、コンスタントにブルーアイドソウル路線を歩んできたロバート・パーマーが、本格的にブレイクするのはまだこの後だが、エレクトリック路線へと傾倒しはじめ、本作ではカプリソ風味なナンバーをご機嫌なアレンジできかせる名盤だ。録音はバハマのコンパスポイント・スタジオ。

higher & higher:John Valenti

元パズルのドラマーで、「白いスティーヴィ」とまでいわれたジョン・ヴァレンティによる、フリーソウル~AORファンから人気の高い名盤「Anything You Want」からの一曲。

MALAIKA :ONO LISA

ブラジル、日本、そしてアフリカ。ブラジルだけにとどまらず、いろんな国のポップ・ミュージックを解体して、独自にボッサテイストに仕立て直してきた小野リサの音楽は、人を幸せにする。このスワヒリ語で「天使」の意味をもつ「マライカ」は、熱い太陽の日差しをいっぱいあびた健康的なスティールパンの響きが気持ちよく耳に飛び込んでくる。

真っ赤な薔薇とランデブー:中山うり

実力派SSW、とわざわざ強調することもない中山うりのセカンドアルバム『VIVA』から。情緒感あふれるアコーディオンを弾きながら、異国情緒たっぷりの素敵な歌を聴かせてくれる。あくまでスティールパンはアクセントだけど、明朗な曲調をさらにカラフルに彩っている。スティールパンはサカモトジャイ庵。

スカートの砂UA

UAの通算3枚目のアルバム『TURBO』のラストを飾る実に雄大な曲。相性のいい朝本浩文とのコンビネーションがばっちきまった「スカートの砂」で、スティールパンを叩いているのは原田芳宏。ちなみに、この雰囲気のあるPVでは、あの映画『バグダット・カフェ』のパーシー・アドロンが監督している。

四面道歌:細野晴臣

トロピカル三部作の最後を飾る「はらいそ」から。やっぱり、この人の曲で締めくくらせていただきます。ミスタートロピカルダンディこと音楽王ハリー細野の「四面道歌」。だれにもまねできないリズムの妙、そこに自身でスティールパンを散りばめてのジャパニーズエキゾチカ・・・もうこのあたり、お手の物なんですよね。

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