dedicated-to-jon-hassell2音楽

ジョン・ハッセル追悼プレイリスト後編

歌モノとの数々のコラボーレーション作品を聴いて ハッセルのその柔軟な対応力に改めて感嘆してしまうのだが、 テクニカルな面に関しては、ある程度推察できるのだとしても。 やはり、あの唯一無二な世界観の原型は、ひたすら瞑想を誘い、 スピリチャリズムにさえ通じる音楽体験をもたらす効能がある気がしている。 それこそ、アルバムタイトルのように、 「マジックリアリズム」とでもいうべく神秘的な側面を有しているのだ。

エル・トポ 1971 アレハンドロ・ホドロフスキー映画・俳優

アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』をめぐって

ちなみに、エルトポとは、モグラのことである。 「モグラは穴を掘って太陽を探し、 時に地上へたどり着くが、 太陽を見たとたん目は光を失う」という冒頭の詩句で始まるが モグラとは、いうなれば愚かさの象徴の意味をもつが、 エル・トポは様々な体験を通じ、 ここではその愚かさを乗り越えてゆく神そのものなのである。

ラストムービー 1971 デニス・ホッパー映画・俳優

デニス・ホッパー『ラストムービー』をめぐって

これは傑作だとか幻のムービーだとかいった 安直な言葉で片付けられない映画として記憶されるべきだ。 映画というものに、ひいては文明や資本主義社会への挑戦でもある。 その意味で、『ラストムービー』は 『イージー★ライダー』以上に重要な作品であり 以後デニスの運命を、よくもわるくも狂わせた作品として はっきり刻印しなければならない。 デニス・ホッパーにしか撮れない映画として。

つめたく冷えた月 1991 パトリック・ブシテー文学・作家・本

パトリック・ブシテー『つめたく冷えた月』をめぐって

かくして、ブコウスキー文学の不思議な清々しさ、 胸のすくような猥雑なざわめきが、 この『つめたく冷えた月』にも程よく溶け出しており、 どこか憎みきれない二人の中年男の哀愁の サイテーながらも、サイコーの幻影とともに酔いしれ そんな弛緩した瞬間に、ふと心地よさを覚えたりするのを 自覚するのである。

The Tenant 1976 Roman Polanski映画・俳優

ロマン・ポランスキー『テナント』をめぐって

それにしても、いくら実際の体験から生まれているとはいえ、 ポランスキーのこうした強迫観念めいた演出は 実に恐ろしく、見事に引き込まれてしまう。 それは『反撥』『ローズマリーの赤ちゃん』にも十二分に発揮されていたが 『テナント』ではそれを見事に当人が演じることで よりリアルで逼迫した空気が張り詰めている。