映画・俳優

小さな恋のメロディ 1971 ワリス・フセイン映画・俳優

ワリス・フセイン『小さな恋のメロディ』をめぐって

誰にだってどうしても忘れられない、そして外せない映画というものがある。 といえば、そのなかに『小さな恋のメロディ』をあげぬわけにはいかない。 そう、ちょうど、メロディが金魚を公共の水場に解き放って眺めるシーンのように、 ただただその光景を眺めてみていたいのだ。 蓮華の花咲く野原を、どこまでも手押しトロッコで 地平線に向かって遠のいてゆくあのラストシーン。 そんな二人の姿を、ずっとずっと見ていたかったのだ。 そこは理屈じゃないのである

友だちのうちはどこ? 1987 アッバス・キアロスタミ映画・俳優

アッバス・キアロスタミ『友だちの家はどこ?』をめぐって

なんといっていいのか、こんな映画があるのだという思い。 それも全く意識していなかったイランからの贈り物。 イランという国が急に身近になった。 キアロスタミはそれ以後、巨匠の風格を醸し 我が国でもそのスタイルに魅せられ、多くの人に支持された監督である。 残念ながら、3年前の2016年にすでに他界しているが その残された作品は今尚みずみずしい輝きに満ちている。 キアロスタミでなければ撮れない映画ばかりが 燦然と残されている。

ブリキの太鼓 1978 フォルカー・シュレンドルフ映画・俳優

フォルカー・シュレンドルフ『ブリキの太鼓』をめぐって

もとはギュンター・グラスによる戦後ドイツ文学の頂点を極める 傑作小説の映画化である。 映画版では、父親の死、葬儀の際に 「なすべきか、なさざるべきか」この葛藤の末に ふたたび成長への意志を決意しブリキの太鼓をも埋葬し、 二十一までの実にいびつな“少年期”の歩みに終わりを告げる格好で終わる。 個人的には成長を宣言した後の十年の物語を含め さらに続きを見たいところだったが、 ここまでの波乱万丈の人生だけでも 十分に魂を揺すぶられる思いがした。