石立鉄男とユニオンドラマをめぐって
間違い無く言えることは、この石立鉄男が出ていた70年代のドラマは 掛け値なく面白かったということであり、 個性あふれる俳優と腕を持ったスタッフたちの奇跡的な共同作業が 時代の良き空気感をそこなわず、素朴でありながらも 同時に濃密にかつ熱く繰り広げられていたからだろう。 まさに良き昭和の風景がそこにあった。
間違い無く言えることは、この石立鉄男が出ていた70年代のドラマは 掛け値なく面白かったということであり、 個性あふれる俳優と腕を持ったスタッフたちの奇跡的な共同作業が 時代の良き空気感をそこなわず、素朴でありながらも 同時に濃密にかつ熱く繰り広げられていたからだろう。 まさに良き昭和の風景がそこにあった。
そのバスタブに、住む、と言うか バスタブをお風呂とは別の使い方をする主人公の物語。 それがベルギー人の作家トゥーサンのデビュー作『『浴室』だ。 ちょっと比較の対象が見当たらない面白い小説である。
『幸福』、唐突に幸福だなんてもちだしたりなんかして 君は究極の楽観主義かい、と思われるかもしれない。 いやね、この『幸福』はちょうど映画のタイトルなんだよ。 ロシアのアレクサンドル・メドヴェトキンの『幸福』のことをいっている。 民話の中に革命と狂想曲を織り交ぜた
アカデミー賞最多13部門ノミネート、 映画ファンの生涯の1本、大大傑作・・・ いろんな賛辞が踊った『シェイプ・オブ・ウォーター』を 劇場で観てあれから三年も経つんだな。 早いものだ。 自分にとって、生涯の1本かと言われると、 即答できないところもあるのだけれど 面白く、そして切なく、要するに観終わって 実に充足感のあった良い映画だったのは嘘じゃない。
そんな自慢にもならない話をしたのは カトリーヌ・ドゥヌーブの話をしたかったからなんだけれど、 で、ドゥヌーブの出世作は 当然、ポランスキでもブニュエルなんかじゃなくって、 やっぱりドゥミの『シェルブールの雨傘』ってことになる。 ちょうどその女の人も、 あのころの初々しいドゥヌーブ嬢の雰囲気に 近かったことだけを覚えている。
そんなレオーの代表作として、 記念すべき第一作『大人は判ってくれない』の 若き日のレオーをまず、とりあげぬわけにはいかない。 なにしろ、たとえ初々しい13歳だろうが、 その後半世紀も経たくたびれた73歳だろうが 結局はレオーはレオーでしかない、 という絶対的神話性がスタートを切った重要なる作品なのだから。
しかしながら、この映画が訴えかけてくるのは 単に脱獄のサスペンスのみならず そこにまつわる人間ドラマにこそ心動かされる映画なのだ。 そこにベッケルのベッケルたるゆえんがある。
西川美和による『すばらしき世界』は 佐木隆三による小説『身分帳』という原案からの映画化である。 そうした失敗者、元ヤクザの男が刑期を終え出所後 この社会でどういきてゆくのか、 周りの人間たちの反応とともに、 そうした世間の冷たい視線を浴びながら 生きてゆこうとする男のあがきその様子が描き出されている。
例えば、スタンリー・キューブリックのカルトムービー 『時計仕掛けのオレンジ』を想起してみよう。 スクリーンにあふれかえるイメージ、アイコンは、 当時からみればいたく未来的であった。 けれども、今見返すと、どことなくレトロモダン風であり こだわりのキッチュな世界が支配している。 単に、懐かしい気分がするのだ。
『ピストルと少年』あるいはこの『少年たち』もまた、 成熟に届かぬ十代の若者たちの周りで起きる、 リアルな憤り、もどかしさを巡って、 ドキュメンタリーのような雰囲気で、 常に逼迫し、何かに追い詰められているそんな臨場感で ナイフの刃のように傷つけ合う激情が晒される。 実にドワイヨンらしい作品と呼べるもので いつもながら、子供たちが実に生き生きしている。 何気ない傑作だと思う。