昨今のレコードブームはちょっと嬉しくなる。
それだけ、音楽に対するこだわりがあるということだからだ。
同時に羨ましくもある。
大きな家に住みたいとは思わないが、
収納を気にせずに暮らすというのが一つの憧れだった。
自分はある時からモノとしてのコレクター生活を放棄してしまった。
モノからは隔ったとはいえ、今もその思いは消えてはいない。
所狭しと並ぶレコードは圧巻だ。
かつてはそもそもレコードショップしかなかったのだから。
そこで、一枚一枚手にとって眺める楽しさは忘れられない。
ストリーミングから流れてくる音も、CDやレコードから流れてくるものも
音楽には変わりがないが、やはり違う。
ダウンロード視聴、あるいはストリーミングメインの人には
わからない感覚かもしれないけれど
ターンテーブルにレコードを載せて、音が聞こえてくる瞬間には
やはりたまらない魅力があるものだ。
レコード盤のノイズそのものが味なのである。
その中で、レコード〜CDでの音楽体験に欠かせないのが
ジャケットデザインと言うもので、
ジャケットが良いから買うというのは少なからず
レコードマニアの中に浸透していたのだと思う。
共通の認識とでも言おうか、そう、いわゆるジャケ買いだ。
思わずジャケ買いをしてしまいそうになる、
そんなアルバムクラシクックスをあげてみようと思う。
古典的名盤シリーズ
ここに挙げた10枚は、中身共々、まぎれもなく歴史的名盤だと思う。
要するに、クールで完璧なのだ。
音とビジュアルとは切っては切り離せない関係だということを、
改めて感じさせてくれるものばかりだ。
こういうものをレコードショップでモノとして生で触れる感性を大切にしたい。
FREE:FREE
Freeは大好きなバンドだ。この1969年のセカンドアルバム「Free」は、まさにブリティッシュロックの名盤だが、このアングル、ジャケットのかっこよさときたら・・・おまけに中身は宇宙だ。ちょっと抜けている気がするほど素敵。もちろんブルーズの影響を受けたフリーのロックが素晴らしいのは言うまでもない。
Abbey Road:THE BEATLES
正直、ビートルズは迷うんだな。
『Revolver』『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』甲乙付け難いセンスをしている。なんならアンガス・マクベインの写真で有名な『Please please me』にも食指が伸びる。
グラフィックのセンスからしても、どっちいいんだけれど、
まず、ストレートにカッコいいなと思わせる『Abbey road』の写真をまずあげておこう。イアン・マクミランによるもっとも有名なビートルズの一枚だと思う。デザインとしても最高にそのスタイリッシュだと思う。このセンス、やっぱし時代を越えるよね。
Sailin’ Shoes:Little Feet
フランク・ザッパ&ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション『いたち野郎』のカバー・アートで有名な、ネオン・パークことマーティン・ミュラーというアメリカ人のイラストレーターのシュールなイラストが目を引く。以後リトル・フィートの看板にもなった。
一見シュルレアリスティックでもある画風だがマーティン・ミュラーにはユーモアがありリトル・フィートの音楽性に通じる哀愁が漂う。
BGM:YMO
『テクノデリック』か『BGM』か好みは分かれるところだろうが
ジャケットは断然『BGM』の方が好きだ。単なるオフセット印刷かと思うが
実は特色6色で剃られているように、こだわりのジャケットである。YMO関連では随分楽しませもらった奥村靫正氏の作品のなかでも会心作でもある。
Diamond Dogs:David Bowie
ボウイ犬が横たわるこのカバーアートは、ボウイのアルバムジャケットの中でも、もっともインパクトのあるものの一つではないかと思う。ギイ・ペラーとの『 Diamond Dogs』だ。歌詞にしろ、アルバムコンセプトにしろ、オーウェルやバロウズなどの影響を受けながら1974年に発表した問題作。
オリジナル版ではボウイの犬の下半身を巡っての猥褻問題ですったもんだするのだが、そんなことはどうでもいいことなんだけどね。SFロックというべきか。
Sticky Fingers:The Rolling Stones
いかにもウォーホルって感じだけど、ベルベットアンダーグラウンドのファーストに並ぶ名作だ。ポップアートの巨匠ウォーホルしてやったりのジャケットだろう。ジッパーを下ろすとブリーフが出てくるのがオリジナル版。バナナのレコードといい、その遊び心満載のセンスに脱帽だ。
Horses :Patti Smith
記念すべきパティのファーストアルバムには、かつて同棲までしていたメイプルソープによって撮られた一枚のモノクロポートレート写真が使用されている。パティの聡明さ、かっこよさが、この一枚に凝縮されていると言っていいほど、通じ合った呼吸の波動を感じさせるジャケットである。一枚の写真としても素晴らしい出来栄えだ。
The Nightfly:Donald Fagen
スティーリー・ダンのドナルドフェーゲンのファーストソロアルバム。
刈り込まれた髪にジーンズからボタンダウンシャツに小紋柄のネクタイ。
ヴィンテージ感の強いマイクやターンテーブルを前にした
DJ=レスター・ザ・ナイトフライ扮するドナルド、渋いね。
音楽の質そのものもそうだけれど、この都会的な情感、センス。
なんともシャレていて最高にクールな一枚だと思う。
Different Trains / Electric Counterpoint:Steve Reich – Kronos Quartet / Pat Metheny
スティーブライヒの楽曲をパットメセニーがギターの多重録音で取り直した名盤といえるこのアルバム。
ミニマル音楽の良さをとことん引き出したパットのセンスもさることながら、ジャケットには鉄道のレールが敷かれているが、裏にはギターのフレットが並べられていてグラフィカルセンス抜群だね。まさに、全てがコンセプチュアルだ。
はっぴいえんど:はっぴいえんど
通称「ゆでめん」。いかにも70年代と言う時代の空気感が漂っているジャケットセンス。
セカンドの四人の顔イラストジャケットもいいのだが
ここはあえてこの赤、黄色特色2色のグラフィックの感性を支持しよう。
アートディレクションには『ニューミュージック・マガジン』の矢吹伸彦、イラストレーターの林静一、そして野上眞宏の写真コラージュ。今の時代に逆立ちしても出てこない発想のデザインが時代性とともに輝きを保ち続けいる。歌詞カードには、大滝詠一のセンスなのか、尊敬する人物がつらつらと書かれているのだが、こうしたセンスをひっくるめて、このアルバムを超える日本のロックをいまだに知らない。
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