ジャケ買いといふもの、其の弐

その音楽がジャケット次第でバカ売れする
というようなことはないにしても、
あまりにもその音楽のテイストからかけ離れていると
よっぽど名の知られたバンドでないかぎりは
それはそれで、聴く気がしなくなってくる。

かつては、分かる人だけに分かれば良いというような
コアなものもあるだろうが、
音楽さえよければ外見等どうでもいいという考えと
ある程度のクオリティは保っていてほしいという考えがわかれたとしても、
こだわらないのと、無頓着なのは違うのだ。

ただ、個人的には、好きな音は
当然ジャケットのテイストにも反映されている、
という思いはいまだ抱き続けている。
そのあたりは、音楽ビジネスのからくりもあるだろうが、
音楽が商品であるなら、身だしなみは必要だ。
音にこだわりのある人間が、ジャケットに無頓着
という時代ではないのは至極当然である。

ここでは、音からではなく、ビジュアルから入る音楽の楽しさを
考察しているわけだが、
やはりファーストインプレッション、第一印象にして
目を惹くというものは、人間の摂理上、
普通にあることではないだろうか?

そうしたことを念頭に、
少なくとも僕が出会ってきたインパクトあるジャケットの音楽を
ここに並べてゆこう。
ここに紹介するものに、基本イロモノという概念はないし、
ゲテモノを揃えて、面白おかしくやり過ごす気はない。
すべて、直球であり、言い方を変えれば、ウィットというものもあろう。
いずれにせよ、音の作り手たちの明確な意思があるものばかりだ。

インパクトシリーズ

In the Court of the Crimson King:King Crimson

まずは、これから。洋楽広しといえど、このジャケットのインパクトに敵うしろものをぼくはこれまでみたことがないと言っていい。
強烈なイメージだ。しかも内容がともなった超名盤だ。
描いたのは名門チェルシー・アートスクールの学生バリー・ゴッドバー。このアルバムが大ヒットしたあと、心臓発作で他界しているというからさぞや無念だったに違いない。
存命ならば、ひっぱりだこになっていたんじゃないかなあ。

いろはにこんぺいとう:矢野顕子

あっこちゃんのアルバムのなかでもこれ以上にインパクトのあるアルバムを他にしらない。
あっこちゃんだと思わなけければ、まず手に取っても聴く気にならないかもしれない。イルカを担いだアッコちゃん、
それぐらい強烈なインパクトがある。時代だねえ。
もちろん、音楽は掛け値なしに素晴らしいし、むしろ、当時の方が好きなぐらいだ。

Trout Mask Replica:Captain Beefheart

キャプテン・ビーフハートというのはどうみても異端の人である。
いったいなんのジャンルなのか、このジャケットからは掴みづらい。フランク・ザッパのアート・エンジニアで有名だったカル・シェンケルが考え出したコンセプトに、ビーフハートが乗っかった格好が、なんだかよくわからない前衛さからは、微妙にずれている気もするけど、この人を食ったような感性が、これまた面白い効果を生んでいると思うな。

Atom Heart Mother:Pink Floyd

すでにピンク・フロイドとヒプノシスの関係記事で取り上げたが、
やはりこのアルバムのインパクトは絶大だ、ということで再登場願おう。それぐらいインパクトがある。何しろ、牛だものねえ。初めて手に取った人なんなんだ?と思ったでしょうね。
牛とプログレ、一体どういう関係性があるというのか?その唐突なフリにピンク・フロイドの奥行き、ヒプノシスの優秀な感性が見事にフィットした歴史的なアルバムだと思う。これがなければKLFの羊ジャケット『CHILL OUT』はなかったんじゃないかな?

Homogenic:Bjork

アレキサンダー・マックイーンデザインによるビョークの変身願望というか、変装趣味というか、この不気味さがこのアルバムの拡張をさらに押し上げていると言える。
まさに無国籍サウンドとしてのアルバムイメージにフェイクオリエンタルなムードを漂わせている。
音だけではない総合芸術としての意識の高さがうかがい知れる傑作だと思う。さすがビョーク。

Nevermind:Nirvana

ニルバーナといえば、これが真っ先に思い浮ぶほど定着したインパクトを誇るアルバムだ。なにしろ世界で3000万枚以上の売り上げを記録したというから、知らないものはいないかもしれない。
このモデルになったスペンサー・エルデンくんもすでに大人の仲間入り。本人にとっても、時代にとっても、ファンにとっても永遠に語り継がれるアルバムだろう。

Brain Salad Surgery: Emerson, Lake & Palmer

『恐怖の頭脳改革』という邦題からしてちょっと恐ろしい感じを受けるけれど、もうこうなるとアートの力の偉大さに平伏すまで。
映画『エイリアン』でも知られるH・R・ギーガーによるデザイン。
これほどぴったりくるとは、おそるべしギーガーである。デボラ・ハリーの『KOOKOO』も手がけていて、ジャケットとしては双璧なんだけれどアルバムのクオリティでELPに軍配をあげておく。

MetalBox (SECOND EDITION):P.I.L

音楽性はなんどもとりあげているので、いいとして
オリジナルバージョンはそのものずばり
金属の丸い箱にパッケージされた45回転盤3枚組。
6万セット限定である。
さすがの音響マニアのライドンさんだけあるこだわりの一枚である。
今では高価な値がつくプレミア盤になっているというが
本人にしてみれば、どうでもいいことだろう。
このセカンドエディション版のカヴァーも秀逸だと思うし、
重要なアルバムだということには変わりがない。この歪み、まるでアンドレ・ケルテスのディストーション写真をみているかのようだ。

Sgt Pepper’s Lonely Hearts Club Band: The Beatles

やっぱりこれは無視できませんねえ。ポップアートの金字塔といって過言じゃありません。
58名もの様々な有名人が記号のように立ち並ぶコンセプトは壮大だ。アルバムの中身は言うまでもないれど
改めて偉大なバンドだったってことを考えさせられるな。

COUNTRY LIFE:ROXY MUSIC

見た目がやはりセンセーショナルではあります。
ビートルズやボウイ、ストーンズにピンク・フロイド
それぞれの音楽カラーにあったコンセプチャルなカヴァーとは違って、こちらはアートいうかファッションモードって感じなんだな。
その辺りはやはりフェリーさんの趣向が反映されているのだろう。
単なるエロではありませんよ。
当時あちらが日本より大分進んでいた、とは思うけれど、それでも流石に物議を醸したというから、いつの時代にもお堅い連中はいるものです。だからこそ、価値があるのですけれど。

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