中学生の頃、にわかに音楽に目覚めだして、
とりわけ洋楽に目が向いたのはいいが、
一風変わったようなものばかりに、反応してしまっていた。
それが、いきなりそれまでのロックを飛び越え
いわゆるニューウェイヴと呼ばれる
イギリスからやってきた音楽体系のことで、
それは、時同じくして、アメリカや日本にも波及していった。
ニューウェイヴというジャンルは、実に多様性を持っていたわけで、
パンクが終わって、ポストパンクだのオルタナティブだの
そう呼ばれることもあるが、
それはときにテクノだったりエレクトロニックポップだったり
そうしたカラフルでキッチュな側面もあれば、
ダブやノイズ、インダストリアル、エクスペリメンタル、音響派と
一筋縄ではいかない、つまりはわけのわからないものも
かなり混じり合って混沌としたジャンルのようにも思える。
とはいえ、文字通りの“新しい波”は、それまでのロック然としたものを
どこかで打破しようという野心と、創造性に満ちていたことは確かであり
よって、基本的には、自分が当時見聞していたものの中で
面白いと認識していたものを総じて、
ここでは一括りにニューウェイヴだと称しているに過ぎない。
ただし、そんなカテゴリ分類に必死になるなら、
ひたすら音楽を聴いていた方がいいだろう。
まちがいなく玉石混交であり、その中で、
ひとまずは、海外と国内でわけてはいるが、
必ずしも一般的な意味での括りでのニューウェイヴ枠から
はみだすものもあるかもしれない。
若干マニアックな個人的な思い入れの回想は、
ひとまず、とどまることを知らない。
つくづく面白い時代であり、音楽に囲まれていたのだと思う。
いずれにせよ、あれこれ理屈をこねたとて
それはただ幸福な体験であったことに変わりがないのである。
ラジオ・スターの悲劇: The Buggles
Roxanne:The Police
パンクからニューウェイヴの流れの中で、最初に心をつかまされた洋楽はポリスだった。デビューした当時には、あんなビッグネームになるなんて、思いもかけなかったが、純粋に衝撃的な出会いだった。3ピースの無駄なき構成に、演奏テクニックはもちろんだが、なんと言っても曲がよかった。ロックにレゲエを持ち込んだバンドといわれるが、まさにそれを含めてイギリスの匂いがした。「Roxanne」は今聴いても胸高鳴る名曲だし、今でも当時の雰囲気を思い出す。ポリスにおいては、やはり2ndまでの一種の孤高性の方にいまでも惹かれる。
London Calling:The Clash
ピストルズ、ダムドなんかとロンドンパンクの流れの中にあったクラッシュ。それでいて、一番親しみやすい雰囲気を持っていたバンドだった。そんなクラッシュがパンクからもう一ランク上のレベルに達したと見えたのがこの2枚組3rdアルバムだったと思う。つまり、London’s Burning からLondon Callingへ。直球主体から変化球を投げ始めた頃だ。来日公演には足を運べなかったが、確かNHKでその勇姿を初めて見て感動したものだった。
Public Image :Public Image Limited
ロックは死んだの名言をはいて、パンクからポストパンクへの鮮やかな転身を図ったジョン・ライドン率いるPILが歩んだ道は、まさにニューウェイヴ総体の舵をとったといっていいだろう。それほどに、このファーストアルバムの衝撃は大きかった。ただし続く2nd『METALBOX』や『FLOWERS OF ROMANCE』に至っては、まさに、前人未到のロックの進化系をまざまざと見せつけられたものだった。
Rock Lobster:The B-52’s
自分の小遣いから初めて買った洋楽のレコードが、このThe B-52’sだった。田舎の近所の小さなレコード店に置いてあったのだ。曲は実にバラエティに飛んでいたが、アメリカンニューウェイヴの異質な空気感を持っており、そのなかでケイト・ピアソンとフレッド・シュナイダー、男女混合のボーカルスタイルで、実に個性的なバンドとして、異彩を放っていた。
Quiet Life:Japan
デビューした頃は、本国ではまるで相手にされていなかったがその名の縁なのか、日本で火がついたのがジャパン。しかも、それはほとんどアイドル扱いであった。当時は、ニューウェイブとは別に派生したニューロマンティクの流れとともにひとくくりにされることもあったが、ジャパンの音楽性は他のバンドとは一線を画していた。結果的にジャパンは、ニューウェイヴの枠を超え個々に進化を続けていったアーティスト集団の帰結として、解散してしまう。この3rdアルバムは彼らが踏み出した最初の変容であり、ここから本格的にエレクトロニクス主体の音楽性をもって快進撃が始まった。
Vienna:Ultravox
ULTRAVOXは大きくふたつにわかれる。ジョン・フォックス在籍時と脱退後。で、ミッジ・ユーロに変わった新生ULTRAVOXから入った。ただし、ポストパンク志向を持ったニューウェイヴ的な展開をしていたのはイーノのプロデュースを受けた初期の方で、ミッジ参加後には、ニューロマンティック流れを組んだエレクトリックポップな方向性を確立したバンドだった。
Science Friction:XTC
アンディ・パートリッジ率いるXTCのファーストアルバム『White Music』は、まさにニューウェイヴ色満載の、パンキッシュなひねくれAVANポップ満載な空気にみちている。個人的にはXTCの最高傑作はトッド・ラングレンのプロデュースによる『SKYLARKING』あたりなのだけれども、これはこれでやはり青春を感じる。
Cars:Gary Numan
70年代後半、イギリスで爆発的な人気を誇ったゲイリー・ニューマンは、まさに英国エレクトロニクポップの申し子だった。この「Cars」はその代表曲だと言っていいだろう。ゲイリー・ニューマンは初期ウルトラボックス、とりわけジョン・フォックスの影響を強く受けており、それが曲調にも反映されていた。
[I Can’t Get No] Satisfaction:Devo
1978年にブライアン・イーノのプロデュースで『Q: Are We Not Men? We Are Devo』でデビューしたアメリカのバンドDEVOは、日本国内ニューウェイヴシーンにも多大な影響を与えている。まさに、ニューウェイヴバンドらしいバンドの一つ彼らの最も知られているのは、おそらくストーンズの「Satisfaction」だろう。アレンジを聴いて分かるように、ロックとニューウェイヴの違いがここに顕著に現れている好例だと思う。
Pop Muzik:M
「ぽっ・ぽっ・ぽっぷみゅーじっく!」実にキャッチーなナンバー。Mこと、イギリス人ロビン・スコットの「Pop Muzik」は、いわばテクノポップにおける代表曲でもある。元は、アシッドフォーク〜R&Bの流れで鳴かず飛ばずだったロビン・スコットが、時代の潮流に乗って大ヒットを記録したのだが、文字通り一発屋で終わった。とはいえ、その印象は、十二分にお釣りが来るものである。この曲は、のちにいろんな盗作問題が絡んでいて、後のレイ・パーカーJr.の「ゴーストバスターズ」は本作の盗作だとして訴訟問題に発展したほどだった。
ただただ懐かしい、と思わず反応してしまう曲がこの「ラジオ・スターの悲劇」である。当時普通にラジオでもかかっていた。それはさておき、イエスにも参加し、もともとプロヂューサー志向が強かった自身、のちにZTTレコーズを立ち上げ、その名を不動のものにするトレヴァー・ホーンが、ジェフ・ダウンズとブルース・ウーリィと共に立ち上げたこのバグルスの大ヒットを記録したナンバー。まさにイギリステクノポップの古典曲である。