「夏の扉」というキーワードで真っ先に思い出したのは
なぜだか松田聖子「裸足の季節」である。
正直、聖子ちゃんファンであったこともないし、
曲がとくに好きだったというわけでもないのだが
やはり、同時代意識というものがどこかですりこまれているものだな、
と思ったまでである。
別に音楽に罪はないし、それを認識してしまう我が記憶がまずいわけでもない。
ある意味、そういうものが歌謡曲、大衆歌謡の良さなのかもしれない。
ぼく自身もっとも多感だった頃、かどうかはさておき、
青春まっただ中にいたことは否定できず、
そのなかで、歌謡曲というものに、どこまで気をゆるしていたか、
というと、今考えてもそのところはよくわからない。
実際、好きで聴いていたのはニューウエイブミュージックだったし、
実際そういうロック的なものを中心に、関心の矛先がいっていたはずだから、
歌謡曲なんて、とあえて思うのだが、
逆に今聴くと、なかなかいい曲や懐かしい曲はいっぱいあるし、
逆にどうして聴かなかったのかという思いがあったりする。
当時はあたまでっかちだったのはまちがいない。
世間知らずで、頑なだった。
でも、それは今の基礎を作った大切な青春であり
それはそれで、なんの後悔もないところである。
だからこそ、いま、時を経て、そのあたりのことを
一つ冷静に思い起こしながら当時の音楽流行事情と、
我がアンテナとの限りなく近接するあたりを、さぐってみようというのが
このページの目論見である。
名付けて記憶をたどる一夏の「夏メロ」特集ということで、
独断と偏見に満ちた80年軸、前後するがここにプレイリストを作成してみよう。
あの日、あの時。記憶を辿るプレイリスト
小麦のマーメイド:松田聖子
私のハートはストップモーション :桑江知子
今思うと桑江知子と沢口靖子の区別がついていない気もするが、この曲は頭にしっかりとのこっているし、今聴いてみると、いい曲だと思う。
林檎殺人事件:郷ひろみ&樹木希林
この曲は、ヒロミゴーの歌とはいうものの、お相手樹木希林とのコンビにインパクトがあって、その分のイメージの残像がのこっているんだろうな。もともとテレビドラマ『ムー一族』内でのコントコーナーの挿入歌だったのだが、このドラマはさほど記憶には残っていない。というかほとんど見た記憶がない。
今の君はピカピカに光って:斉藤哲夫
この曲は斉藤哲夫というよりは、宮崎美子のCMイメージが圧倒的に強く残っている曲だ。確かに、まぶしかった。曲自体わるくないと思う。なんといっても、作詞糸井重里、作曲に鈴木慶一とくれば、納得だ。やはり、CMに使われヒットした曲というのは、なかなか忘れないものなのかもしれない。
銀河鉄道999:ゴダイゴ
けして嫌いではなかったゴダイゴ。ただ個人的にも、位置づけが難しいバンドであるのはまちがいない。この「銀河鉄道999」はなかなか名曲だと思う。何しろ僕らの時代の金字塔アニメの主題歌だったからね。確か、小沢健二の曲に、似たようなメロディがあったのを覚えている。盗作問題にまで発展しなかったとは思うが、その気持ちはわからないでもない。それぐらい頭にこびりついている。
夏の夜のサンバ :和田アキ子
和田アキ子をソウルの女王として担ぎ出したのは、小西康陽の力なんだろうな。たしかに、いわれるとそうなんだれども、どうもテレビタレントのイメージが強くて、なかなか切り替えができないけど、歌にはパンチがあるし、ソウルを感じることもある。で、この曲は、小さい頃の刷り込みの中にある一曲で、好きな曲だな。
赤道小町ドキッ :山下久美子
「恋は熱々亜熱帯・・・」松本隆・細野晴臣コンビで作られちゃ、そりゃあ無視は出来ないか。しかもアレンジが大村憲司だ。ただ、このあたりは当時自分がメインで聴いていたテリトリーにあった音楽だといえる。これまたカネボウのCMソングだったかな、やっぱりCMとのタイアップは強いな。
Mrサマータイム:サーカス
特に意識して聴いていた覚えもないのに、聴くとなぜか懐かしい思いがするな。不思議なものだ。78年カネボウ夏のキャンペーンソングで、大ヒットしたのがこの『Mr.サマータイム』。こういうのがムード歌謡とか言ったりするんだろうか。どうでもいいことだけど、原曲であるフランスの「愛の歴史」に邦訳詞をつけたんだね。
モンローウォーク:南佳孝
昨今のジャパニーズシティポップブームで見直されている一人南佳孝のナンバー。当時は、やっぱり歌謡曲流れの感じで聴いていたけれど、今聴くとやっぱり、その辺の歌謡曲とは少し違っている気がする。アレンジには坂本龍一。この辺りは今でも安心して聞けるな。
時間よ止まれ:矢沢永吉
クールスをはじめとして、永ちゃんこと矢沢永吉の音楽を長年ちゃんと聴いてはこなかったけど、今聴くと、確かにいい曲もあったりする。偏見はいけないってことだね。ただ、ミュージシャンとしてよりは、一人の人間ヤザワの方が興味があったのは事実。音楽は音楽、人は人。当時は音楽番組にも出なかったし、音楽に対し純粋な人だと思う。この曲もまた資生堂のキャンペーンソングということで、力が入っている。バックのメンツに教授や幸宏がいるってのもすごいな。
聖子ちゃんが好きだった記憶は一度もない。子供っぽく映っていたのかもしれない。しかし、あのころの人気を体感値として知っているのは間違いない。時代のアイドルだったから。どこからともなく聞こえてくる歌だけは、どうにも記憶がのこっているもの。ただし、今聞くといい曲だなと思ったりする。松任谷夫妻だものな。そういえば、クレジットをみるとユーミンが呉田軽穂(グレタ・ガルボ)名義で書いていたころだね。