田舎者とは言わせないカントリーミュージックの魅力に触れてみよう

実家は大阪にあるが、育ちはその中でも田舎の方だ。あえて町の名前は伏そう。南の方だ。町をあげてだんじりが駆け回る町。祭りがくると学校が休校になったっけ。繁華街なんてものはなく、時代も手伝って、周りは田んぼばかりだった。ちょっと足を伸ばせば山もあれば海もあった。土の匂いを覚えている。泥の感触が蘇ってくる。田んぼでサッカーや野球をしたものだった。そう、まさに『アパッチ野球軍』みたいな世界だ。ちょうど中学を機に、都会へと繰り出し、そんな田舎生活ともおさらばすることになるが、どこかで田舎をひきづったまま成長した。ノスタルジアというほどのものでもなかったが・・・

田舎者が小ばかされる風潮は今も昔もそう変わらない。「おのぼりさん」への潜在的意識というやつが、生粋な都会人をきどっているものにはどこかですりこまれた絶対的な侮りの感覚なのかもしれない。それでいて、田舎を持つものへの憧れや羨望がどこかにあるのだから実に矛盾している。とはいえ、価値観の多様化、インターネットの普及で地方がぐっと身近になった気がするのは確かである。今時、都会も地方もない。少なくとも、音楽にはそんな区別は通用しない。

仮に田舎という響きからカントリーミュージックを思い浮かべるとしよう。
確かに、かつてはカントリーミュージックなんて垢抜けしない音楽の代表として認識されていた。
かくいう自分も高校生時分には教室でバンジョーを弾く同級生をどこかで蔑視していた気がする。
その同級生はバンジョーが上手だった。僕は密かにバンジョ小僧と名付けて眼中に入ってこなかった。
時代はロック、ポップスの全盛期で、パンク、ニューウェイブの流れをひたすら聴き入っていた自分には、全く心に響かなったものだった。だから当然カントリーミュージックなどは論外であった。

そうして、時代は流れた。時代のせいだろうか?カントリーミュージックが心に染みる年代になってきた。
もともと、フォークやルーツミュージックはカントリーの流れにあったわけで、カントリーに魅了されるのは時間の問題だったわけだ。こうして冷静に考えれば、アメリカンルーツミュージックにはいい音楽、つまりはお宝がいっぱい詰まっているのだ。今更ながらにそう思う。そんな中で、カントリーミュージックを再評価しようと思ったのである。素朴、純朴でありながらも、なぜか沁みてくるメロディ。その音に魅せられている今、ようやく音楽とは何なのかがわかり始めた気がする。そう、音楽はジャンルなんかどうでも良いのだ。カントリーもロックも、クラシックもジャズも、全てが魂を揺さぶる全ての音楽こそがここにあるのだ。

我が家のカントリーミュージック定番セレクション 10枚

Hank Wiiiams :Anthology

Hank Williams – Long Gone Lonesome Blues

カントリーといえば、この人は絶対に外せない人。その名はハンク・ウイリアムズ。その代名詞だろう。享年29はいかにも若すぎる。必ずしも幸福な生涯を送ったわけじゃないが多くのミュージシャンが曲を取り上げていることからもわかるように、今改めてその才能が評価されているミュージシャンなのだ。
じっくりと聞くと、牧歌的というよりは哀愁が漂ってきて、ついには涙が出てくるような曲が多い。

Hank Williams Tribute by Various Artists: Timeless

I’m So Lonesome I Could Cry · Keb’ Mo’

このアルバムを聴いていたら、やはりハンクの偉大さを実感するな。参加メンバーもなかなかである。
ボブ・ディランを筆頭にシェリル・クロウ、KEB’ MO’、ベック、マーク・ノップフラー、トム・ぺティ、キース・リチャーズ、エミルー・ハリス、ハンク三世、リアン・アダムス、ルシンダ・ウィリアムス、ジョニー・キャッシュまで。何よりもその楽曲が素晴らしい。

Lucinda Williams:Car Wheels on a Gravel Road

Car Wheels On A Gravel Road · Lucinda Williams

カントリーロックの姐御ルシンダ・ウイリアムズ。グラミー賞の最優秀コンテンポラリー・フォーク・アルバム、というだけあって出来はすこぶる良い。素朴なカントリーというよりはルーツミュージックをうまく昇華した珠玉のアメリカンポップと言えるかもしれない。ここにもハンク・ウイルアムズの影が覗くが、詩人でデルタブルースを愛した父親の影響下にあるルシンダの知性に惹かれる名盤。

Bill Frisell:The Willies

The Willies · Bill Frisell

アカデミックなジャズから素朴なカントリーやルーツロック、ポップミュージックまで、そのジャンルにも造詣の深いギタリスト、僕の一押しギタリスト、ビル・フリーゼルのカントリーサウンド。
ドブロやバンジョーなどもこなしながら、カントリーの良さをさらに噛み砕いて、まさに自らのルーツミュージックとして独自の解釈を加えてそれでいてウォームハートなサウンドで親しみやすいアルバムに仕上げてしまうところがすごい。しかも天才でありながらなんという親しみやすさを備えていることか。これぞ名人芸なり。

Lonesome Strings & Mari Nakamura:Folklore Session

The Cuckoo Bird · Lonesome Strings and Mari Nakamura

その昔SAKANAとのカップリングライブを観て、いいなと思っていた中村まりが桜井芳樹が立ち上げたLonesome Stringsをバックに本格的なルーツミュージックを展開している。中央線沿線の懐かしい匂いと音に熟成が堪能できる。ネイティブ以上に自然な響が心を打つ中村まりの歌声に、国籍を超えたカントリーの本質が聞こえてくる。素朴でありながらもどこまでも伸びやかで力強い。まりさんのソロもいいんだけど、とりあえずこっちを推しておこうか。

Jerry Douglas: Traveller

Jerry Douglas – The Boxer (feat. Mumford & Sons and Paul Simon)

数々のレコーディングに参加、またはプロデュースしてきたジェリー・ダグラスのソロ。
13回のグラミー受賞歴を誇るというから、その音楽に偽りはない。
ジェリー自身、アリソン・クラウス&ユニオン・ステーション のメンバーでもありドブロの神様と言われるほどだから、クラプトン、ドクタージョン、ポール・サイモンなど参加ミュージシャンも豪華なこのアルバムは掛け値無しに素晴らしいのは当然といやあ当然である。サイモン&ガーファンクルの名曲「The BOX」など、たまりませんね。

Gillian Welch:The Harrow & the Harvest

Hard Times · Gillian Welch

公私にわたるパートナーであるデヴィッド・ローリングスとギリアンが達した円熟の境地ここにあり。
演奏はあくまでトラディショナルで古典を踏襲するスタイルだがすでにベテランの域へと向かう彼ら二人にハーモニーが素晴らしい。新しさのかけらが少しもないあたりが、彼らがホンモノ志向だということの証でもある。
肩がこるわけでも身構えることもない自然体の音楽がここに一つの完成形としてあるのだ。

Gram Parsons:GP

She (2002 Remaster) · Gram Parsons

バーズ、フライング・ブリトー・ブラザーズからそソロへ。商業的な成功こそ収められ収められなかったがカントリーロックの騎手として間違いなくその道の重要人物として記憶されているグラム・パーソンズ。
かつてはキース・リチャーズ=ミック・ジャガーと並べられて賞賛されていたほどの人物である。ドラッグが全てを奪ってしまうという、ある意味典型的なミュージシャンの末路となってしまったが残された音楽はその才能を雄弁に物語っている。
コステロのカバーでも知られる「She」が大好きだな。

Johnny Cash:THE MAN COMES AROUND

Hurt · Johnny Cash

あのプレスリーに肩を並べるほどのヒット曲をもち言わずもがな、カントリーの大御所である。
無論、カントリーの枠に収まりきれずゴスペルやルーツミュージックの担い手である。
俳優としての活躍も見逃せない男だったが、ジェイムズ・ジョイスとディラン・トマスを愛した男でもあり曲には波乱万丈な人生の重み、深みを溶かし込んだ。
薬物にまみれ負の連鎖がキャッシュを苦しめたがカントリーの枠だけで聴くにはもったいないほど、ここには豊かな音楽が流れている。デペッシュ・モードの「Personal JESUS」もいいんだけど、ナイン・インチ・ネイルズのカバー「Hurt」はまさにそんなキャッシュの人生を反映して胸に迫ってくるものがあるな。

Bob Dylan:The Freewheelin’Bob Dylan

Bob Dylan – Blowin’ In The Wind

カントリーというジャンルだけで、ディランを語ろうとは思わないし、語れないのだが、それでもここにはカントリーのエッセンスがたっぷりと流れている。他にも名盤目白押しのディランではあるが、ジョンやポールをも虜にしたこのアルバムが大好きだ。当時のガールフレンドスーズ・ロトロとの写真が使われたジャケットも素晴らしい。
「 Blowin’ in the Wind」に代表される名曲揃いはいうまでもなくわがディラン熱もまた、ここから始まったのであった。

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