特集

『地中海の猫』バルチュス1949アート・デザイン・写真

バルチュスに靡いて

そんなバルチュスの絵のなかで、 ほくは、ズバリこの『地中海の猫』絵が大好きだ。 パリのシーフードレストランのために描かれた ちょっと変だけど、可愛い猫人間のタブロー。 ここには、危険さも、伝統の縛りもなく、 かといって、幻想絵画のマジックというほどのものもない。 ミツを愛した少年バルチュスがそこにいて、 勝新の座頭市に嬉々として見入るお茶目なバルチュスがいる、 そんな気がして、大好きなのである。

Giuseppe Arcimboldo | Allegories of the Elements, 1576アート・デザイン・写真

アンチンボルドを讃えて

魚や鳥、果物や植物を構成して 肖像画を描いてしまうその想像力に舌を巻かざるを得ないのだ。 なんと刺激的で、魅惑的な絵画なのだろう。 ダリを始め、エルンストやマグリット あるいはチェコのシュワンクマイエルなど、 そのエッセンスは当然のごとく、 20世紀の美術に多大な影響を与えており シュルレアリスムの父とさえ呼ばれるところだが そのグロテクスなアンチンボルドの寄せ絵には、 どこか静謐さと品性が絶えず宿っており 少なからず、その人となりを伝えているように思われる。

サンドロ・ボッティチェッリの『ビーナスの誕生』アート・デザイン・写真

ボッティチェッリに誘われて

西風の神ゼフィロスは春風の息吹きで 貝殻の上にそびえ立つ女神像を海岸へと押し上げ、 時と時節を司る女神ホーラは、 衣装を持って、ビーナスを包み込まんとしている。 周りでは花が舞い、波が押し寄せている。 この静と動の緊張が、この一枚の絵画を 比類なき美に高めているのだということに 今更ながらに気づいたのである。

アート・デザイン・写真

モランディに魅せられて

そこには何か奇抜なものがあるわけでもなく、 瓶やじょうご、水差し、壷といった器物を中心とした ナトゥーラモルタ(イタリア語で静物画という意味を持つ)を 平面に並べて描くというコンポジションが主で 目を惹く仕掛けのようなものはただの一枚もない。 なのに「20世紀最高の画家」と言われる由縁はなんだろう? そういう思いからどんどんとモランディの絵に魅せられていく。 確かになにかが心にひっかかってくる絵なのだ。

ログでなしvol4アート・デザイン・写真

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL.4

僕は絵の可能性、一枚の絵の魅力に取り憑かれた人間というだけだ。 絵描きという存在の復権を願って、ここに美術史の中から なんの脈略もなく、心に留まった画家を拾い集め 個人的な思入れを書いてみよう。 あえて、絵というものに終始固執した画家たちについて取り上げてみよう。 僕にとってはそうした絵描きは憧れであり、同志であり、夢先案内人だ。

Carrie 1976 Brian Depalma映画・俳優

ブライアン・デ・パルマ『キャリー』をめぐって

いうまでもないことだが、スティーブン・キングは実に偉大な作家だ。 モダンホラーというジャンルにおいての地位を確立し、 その原作を元にした映画化があとを絶たないことからも、 映画界においても貢献度というものは実に計り知れないものがあり、 また、一定の水準以上のクオリティを誇っている作品が多いのも、 そのことを証明している一端だといえるのかもしれない。 もっとも、自分は原作の熱心な読者でもなく、 あくまでも映画化されたごく一部のスティーブン・キング作品のファン、 というだけのことであるが、 そのまさに第一歩が全てデ・パルマによる『キャリー』に始まっており 記念すべき、この第一章について、語らぬわけにはいかない

高橋洋『霊的ボリシェヴィキ』映画・俳優

高橋洋『霊的ボリシェヴィキ』をめぐって

高橋洋という作家はまず、 脚本家として『リング』『女優霊』で Jホラーというジャンルを確立した第一人者だが、 まだ、そう詳しく語れるほど知る映画人ではない。 しかし、『霊的ボリシェヴィキ』というタイトルの響きからして 単なるエンターテイメントを超えた何ものかを 想起させるには十分のインパクトがあったし、 この先、日本の映画土壌、このジャンルにおいて 可能性を感じる作家である事は間違いないところである。