映画・俳優

ろぐでなし VOL.5映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL5.

少なくとも、好きになった映画の、 そのたまらない空間の中に俳優に恋をする、まさにそんな感覚に過ぎない。 言うなれば、その映画が傑作であれ、駄作であれ、 俳優だけで観れてしまう映画というものもまままある。 その俳優が写っているだけで、何かを話したり、何か気になる仕草をしたりすることで 我々観客の心を奪ってしまうほどの存在。 ここでは、そうした比較に基づいて書き始めようなどという大それた考えは一切ない。 ただその映画が好きだという理由を あえて俳優目線に落とし込んで考えてみたい、それだけのことなのだ。

Carrie 1976 Brian Depalma映画・俳優

ブライアン・デ・パルマ『キャリー』をめぐって

いうまでもないことだが、スティーブン・キングは実に偉大な作家だ。 モダンホラーというジャンルにおいての地位を確立し、 その原作を元にした映画化があとを絶たないことからも、 映画界においても貢献度というものは実に計り知れないものがあり、 また、一定の水準以上のクオリティを誇っている作品が多いのも、 そのことを証明している一端だといえるのかもしれない。 もっとも、自分は原作の熱心な読者でもなく、 あくまでも映画化されたごく一部のスティーブン・キング作品のファン、 というだけのことであるが、 そのまさに第一歩が全てデ・パルマによる『キャリー』に始まっており 記念すべき、この第一章について、語らぬわけにはいかない

映画・俳優

ジョナサン・デミ『羊たちの沈黙』をめぐって

さて、本題の『羊たちの沈黙』に入ろう。 賞を総なめにしたぐらい、傑作ホラーサスペンス作品としての 呼び声が高い本作であるが、 公開当時は、ホラーというジャンルのせいもあって、 ちょっと距離を置いていた映画である。 その後、DVDで観て、確かにショックを受けた。 この映画は実によくできているなあ、というのが第一印象で サイコパスの恐ろしさ、猟奇的な犯罪者の心理が 実にうまく描かれていて、 まさに傑作の名に恥じない映画として、 世間の認識に、ようやくこちらが追いついたと安堵したものだった。

高橋洋『霊的ボリシェヴィキ』映画・俳優

高橋洋『霊的ボリシェヴィキ』をめぐって

高橋洋という作家はまず、 脚本家として『リング』『女優霊』で Jホラーというジャンルを確立した第一人者だが、 まだ、そう詳しく語れるほど知る映画人ではない。 しかし、『霊的ボリシェヴィキ』というタイトルの響きからして 単なるエンターテイメントを超えた何ものかを 想起させるには十分のインパクトがあったし、 この先、日本の映画土壌、このジャンルにおいて 可能性を感じる作家である事は間違いないところである。

小林正樹『怪談』映画・俳優

小林正樹『怪談』をめぐって

これから書いてゆく怪談話で 果たして昨今のホラーテーストに毒された層が盛り上がるかどうかまで自信はない。 いや、むしろ、その趣きに戸惑うことになるかもしれない。 どちらかといえば、アート色が色濃く 古典落語などが好きな人向きの話である。 小林正樹による映画『怪談』は、ラフカディオ・ハーンこと小泉八雲の怪談話を オムニバス形式で取り上げた1965年度の作品で 誰もが楽しめるようなエンターテイメントではなく むしろ、格調高き、骨董のような深みのある映画になっている。 海外では、国内以上に評価の高い作品であり、 キャストの方も、当時の豪華絢爛たる俳優陣の熱演ぶりで 当然のことながら作品に箔を付けているほど出来がいい。 その上に、作品を支えるスタッフの充実ぶりが目を引く。

雨月物語映画・俳優

溝口健二『雨月物語』をめぐって

その役は朽木屋敷に棲まう死霊であり、 話のなかで、そこだけしか登場しないにもかかわらず その存在感たるや、かなりインパクトの強い役柄である。 能面のようなメイクと艶やかなで陰影ある魔性の女。 相手が森雅之演じる陶工源十郎で 命からがら屋敷から逃げ帰るシーンが圧巻だ。 藤十郎が過ちを悔い、家に帰らせて欲しいと懇願するところへ、 老女と姫が狼狽し、クライマックスを迎える。 織田信長に滅ぼされた朽木屋敷の若い姫君の 哀しい思いを背負いながら、無念とともに消え去っていく情念。 老女毛利菊枝とのコンビにおける怨讐の恐ろしさは 昨今のホラーにはない、独自のムード、美意識を漂わせている。 まさに魔に憑かれた男の無常感がそこはかとなく漂う中 奇気たるまぐわいの宴の余韻が残る

映画・俳優

スタンリー・キューブリック『シャイニング』をめぐって

いやはや、知覚の恐怖に費やす言葉はかように、 いかようにも豊富にあふれていて目が離せないのだが、 この恐ろしい映画の主役ジャック・ニコルソンが、 最初から最後まで、ひたすら、何か恐ろしいものに突き動かされ いわばあらゆる憎しみと怨念を背負った格好で、 妻や子をオノ片手に追い回す、 いわば狂気の沙汰を十二分に見せつけられているうちに、 単に映画は狂人譚の様相に支配されてゆく。 だが、『シャイニング』というのは、元は息子ダニーや特殊な能力のことであり、 その出所は、ジョンレノンによる「Instant Karma!」と言う曲の一説にある 「Well we all shine on Like the moon and the stars and the sun」 からだと原作者スティーブン・キング自身が語っている。