ときめきとよろめき、春めく季節は恋の匂いがする
随分、恋などしていない。
もうそんな甘い、甘美なときめきを忘れてしまったよ、
なんていうのはちとさみしすぎる。
人間、いくつになっても恋の一つ二つはしていたい。
年など関係ない。
たとえ、伴侶がいようと、パートナーがいようといまいと、
それが一期一会であれ、思い過ごしであれなんであれ
男と女がいればそれだけで十分なのだ。
意識さえうごけば、物語なんて勝手に出来上がるだろう。
とはいえ、陳腐な恋愛などうっとうしく、野暮だ。
そう言い切ってしまう達人の気持ちはなんとなくはわかる。
しょせん、市井の色恋など、つまらないガラクタの山ばかり。
多少なりとも歳を重ねれば、一度や二度の後悔や過ちはある。
人間なんてそんなものか・・・
それならと、目を閉じてみよう。
現実の出来事が面倒でも、空想や物語のなかでは
少々自分勝手な味付けはゆるされる。
恋は空想だ。
しょせん、まやかしであり、幻想だ。
そう言い切るのは、これから語ってゆく映画は
いくらそれが素敵な男女間の間の色恋沙汰とはいえ
所詮作り物にすぎないからだ。
まあまあ、そう熱くなりなさんなよ、ベイべー。
ぼくのように日頃から空想に生きているような男にとっては
まさに映画のなかの現実の方によっぽどリアリティを感じるってものだ。
などと少々粋がってみせて、
どこかで現実の素敵な恋を待ちわびているのかもしれない。
いわば、情けない男の部類に該当するのか。
つまらない自己否定はもっとかっこ悪いな。
いや、いたいことはこうだ。
映画の中の絵空事だといってはもったいないではないか。
恋にルールや手段はない。
いついかなるときも、恋の手ほどきを心の片隅に忍ばせて
いざそのチャンスの扉が開けば、
いつだって軽やかに踏みこんでいける術を学ぼうではないか?
ま、そんな大げさなものでもないが
恋は勉学の対象ではないにせよ、映画にはロマンティックで
マネしたいような、うっとりするような瞬間はいくらだってある。
でも、チョット待って!
そんな安直な特集を、貴殿がここで繰り広げたいのですか?
そう思いのあなたにだけ、特別な映画を選りすぐってご紹介しよう!
別段、美男美女のロマンティックな恋模様だけが全てではない。
くたびれのもがきであろうと、老いらくの狂い咲きであれ、
またまたトンチンカンで自己中な恋愛であれ、
はたわけのわからぬ戯れであれなんであれ、かまいはしない。
そこにいる男と女がそれぞれの立場で、
相手を思い、すれ違う様をこの瞳に映じて
白昼堂々夢をみようというだけの話だ。
PIZZICATO FIVE :恋のルール・新しいルール
男と女でイメージする曲はこの世に五万とある、そのなかから一曲を選べと言われると実に悩ましいのだけれど、まあ、恋する思いを俗にオシャレな感覚だという風受け止めるならば、やっぱりピチカートファイブの曲が素直に浮かんでくる。アップテンポで快活で軽やかな恋の気分を歌うナンバーで、これはピチカートと筒美京平という組み合わせの曲。PV込みで、ピチカートらしいナンバーだ。難しいことはさておいても、結局、恋っていうのは「あなたに逢いたい(いたい)」と思わせるか、思われるか、それが全てなんじゃないかって思うな。
特集:女と男のいる鼓動
- ボブかセシルか、あんな女優そんな女優・・・ジャン=リュック・ゴダール『女と男のいる舗道』をめぐって
- 上がるべきか、降りるべきか、銀座を巡る階段話・・・成瀬巳喜男『女が階段を上る時』をめぐって
- 愛は永遠の疾走を繰り返す・・・・・・レオス・カラックス『汚れた血』をめぐって
- パイナップル缶の中のラブストーリー、続きは香港エクスプレスにて・・・ウォン・カーウァイ『恋する惑星』をめぐって
- 汝、隣人を愛しすぎることなかれ・・・フランソワ・トリュフォー『隣の女 』をめぐって
- 合言葉はダバダバダ、そこからはじまる男と女のストーリー・・・クロード・ルルーシュ『男と女』をめぐって
- 男と女の軌跡の奇跡にダバダバダ、そしてサラヴァ!・・・クロード・ルルーシュ『男と女 人生最良の日々』をめぐって
- 男と女の老賢ロール・・・ミヒャエル・ハネケ『愛、アムール』をめぐって
- 失われたバージン感覚を求めて〜昭和男のノスタルジック狂騒曲・・・藤田敏八『バージンブルース』をめぐって
- 絶対の愛・・・増村保造『曽根崎心中』をめぐって
コメントを残す