日本には似合わない風景のひとつ、プール付きの豪邸。
庭先に、ビニールの臨時プール、せいぜいその程度か。
サバービアほど日本に似つかわしくない言葉もない。
まあ、気候にも大きく左右されるんでしょうが、
ホックニーの絵のようなプールなら、眩しい陽光が必須。
とは言っても、夏のプールはそれ以上に人でごったがえす。
優雅さは、空間性ありき、というべきか。
ただし、室内プールなら事情も違う。
昔、体育の授業での水泳の時間が嫌いだったんだけどな。
うまく泳げなかったのもあるし、
そもそも着替えるのが邪魔くさかったから。
コンプレックスなんだろうか。
人前で水着になるものいやだった。
気だるいプールの匂いそのもので気が滅入ってしまう。
今でもあのころを思い出すと楽しい思い出がひとつもない。
なのにいまは、なぜか気持ちいいのですよ。
誰にも命令されず、自由気ままに泳ぐからだろうか。
室内の市民プールは時間を選べば比較的人気もない、
水と贅沢に戯れられるけっこう穴場ではないかと。
それでいて、けっこうな運動になる。
水中歩行でも十分に疲れる。
特に練習したわけじゃないけど、
今なら不思議なことに、
25m、50mぐらいちゃあんと泳ぎきれるんだな。
はあはあいうけど。
クロールに平泳ぎ、背泳ぎでも。
そりゃあ泳ぎきれば気持ちいい。
でも、ハードにハアハア泳ぎまくるほど体力はない。
水に戯れながら、せいぜいだらだらと泳ぐぐらいがちょうどいい。
水遊び感覚でもいい。無理は禁物。
改めて水という物質に癒される瞬間を知るのです。
帰りに外の風を浴びる瞬間がまた気持ちいいものです。
我が家のサマーミュージック定番セレクション:其の参
ハワイ・チャンプルー:久保田麻琴と夕焼け楽団
沖縄〜ハワイを結ぶチャンプルーな音楽で
ひたすらレイドバックした夕焼け楽団に熱き一票を。
夏のセレクトに、コレをあげない訳にはいかないな。
夕焼け楽団とは、なんて素敵な響きだろうか。
世代的にはサンセッツ経由でたどり着いた麻琴さんだけど
この手の音楽は細野さんが横綱で、久保田麻琴は大関か。
他の追随を許さない域にあることは間違いない。
サウス・オブ・ザ・ボーダー:南佳孝
シティポップの隠れ名盤。
一曲目の「夏の女優」から、トロピカル全開の音が聴こえてくる。
スティールパンは細野さんだ。
で、このアルバムの全アレンジが坂本龍一。
ドラムは二曲幸宏で、あとは林立夫。
うーん、悪かろうはずのないサウンドがあります。
ジャケットには池田満寿夫の「愛の瞬間」が使われ、
もうケチのつけようがない都会の美学、ここにあり。
Holger Czukay:MOVIES
もう何回も取り上げているので説明不要。
トラウトロックの重鎮ホルガー・シューカイの名盤『MOVIES』
何と言っても時筆すべきは「Persian Love」だけれども
まずは「Cool in the pool」で冷をとるのもありでしょう。
紡がれた音の絵巻物のようなサウンドコラージュ。
つぎはぎだらけのわんぱくな夏、そして永遠の世界がここにはある
Summerin’:土岐麻子
ネオ・シティポップと言っていいのか悪いのか
五万と溢れているその手の音楽の中で
土岐麻子の歌、曲には凛とした大人のスタイルと
ポップ・ミュージックの軽やかさが
絶妙のセンスでブレンドされ提示されるところに好感が持てる。
血統というか、血筋というか
父はジャズサックス奏者で、先日亡くなった土岐英史。
やっぱりそういうものがあるのかしら。
Music Fa’ Ya (Musica Para Ti):Taj Mahal
インドの建築物タージ・マハルではない、
ブルースシンガー、タジ・マハールのことだ。
あのライ・クーダーとかつては
ライジング・サンズというバンドを組んでいたことのあるタジは
ブルースのみならず、ルーツ&エスノ・ミュージックを融合させた
ひたすら熱く泥臭い音楽を作ってきた人だ。
そんなタジの多彩なアルバムの中でも
実に軽やかで実にリラックスできる本作は
スティール・ドラムがフィーチャーされ
カリブの眩しいトロピカルなサウンドに溢れた名盤だ。
En CAVALE:ISABELLE ANTENA
パリ出身のイザベル・アンテナことイザベル・ポワガは
80年代初頭ベルギーのクレプスキュールから
まずは3人組ユニット「ANTENA」としてデビュー。
ボッサの名曲「イパネマの娘(イパネマの少年)」の
フレンチ・ボッサなカバーでおしゃれなカフェミュージックとして一世風靡する。
プロデューサーには元ウルトラボックスの
ジョン・フォックスを迎えてのデビューだっただけに
その力の入り用は想像できる。
そのソロ第一弾がこれ。
まさに夏のバカンスのアンテナにひっかかる一枚である。
King Of The Beach:Chris Rea
クリス・レアには『ON THE BEACH』
という傑作アルバムがすでにあるので
素直にそれを選べば良いのだが、
自分の耳にはなぜか秋〜冬にかけての海のイメージが湧いてくる。
なので、あえてこのサマーセレクトからは外して
その代わりと言っちゃ語弊もありますが
「ON THE BEACH PART2」と言っていい
その名も『King Of The Beach』の方を取り上げてみた次第。
渋いクリスの声、ギター、共に申し分ありませんね。
リトルメロディ:七尾旅人
夏のリゾート音楽ではないのは間違いないけれど
ところどころ夏の香りがするアルバム。
夏の夜に、海岸で潮騒の音を聞きながら耳を傾けていたい、
そんなロマンティックな音楽が紡がれる。
震災にいち早く反応し、
その声を音楽として届け発信してきた七尾旅人の暖かい歌は
天空に宝石のようにきらめく星のような曲が立ち並んでいる。
そこで願い事は一つ。
人と人が心通わせること。
痛みから解放されること。
音楽はそのための道具に過ぎないのだと、
その小さなメロディが語りかけてくる。
なんと雄弁なる魔法のような音楽でしょう。
トロピカル・ダンディー:細野晴臣
ちょっと古いが「クリープを入れないコーヒー」みたいなもので、
このセレクションに細野晴臣を入れないなんて実に味気ない。
トロピカル三部作のどれだって構わないし
アンビエントものでもよかったが
あえてタイトルからこれを選んだ。
今更説明不要の超名盤。
Aux Armes Et Caetera:Serge Gainsbourg
好きなレゲエアルバムは他にもあるのだが
ここは一発、フランス発ジャマイカ録音の
ゲンスブール版レゲエをセレクトしよう。
スライのメンツが全面参加した渾身の一枚、
と言いたいところだが、相変わらずののらりくらりのゲンスブール節全開。
「ラ・マルセイエーズ」の歌詞を一部引用したがゆえに
冒涜だとしてタイトルトラックが物議を醸し
右翼に狙われるというあたりがゲンスブールらしい挑発だ。
なので音は気楽に聴けるが実は刺激の強いアブナイ音楽なのだ。
さすがは危険な男である。
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