アンビエント・ミュージック特集

AMBIENT

秋の気配に乗じて、
日頃ヒーラーとして大いに世話になっている
アンビエントミュージックセレクションを書いてみたい。

もともとアンビエントへの思いは強いが
時代とともにアンビエントの形態にもずいぶん変化が見られる。
一口にアンビエントといっても音の形状、
雰囲気はそれぞれに異なるものだ。
また、アンビエントという定義からはみ出すようなものもあるかもしれない。
もちろん、心地よさ、快適な音響、
そして日常の精神への作用を含めて
長年にわたり親しんできた音の処方箋といってもいいものばかりであることには変わりはない。
秋の夜のお供には最適だと思われるものを主体に選んでみよう。

ちなみに夏にチルアウトミュージックセレクションをいろいろ書いたのだが、
果たしてそれとどう違うかと言われると困るのだが、
一応、定義としては、秋の夜長に聴くアンビエント
ということにして、なるべく前出と被らないようには
セレクトしようと思う。

我が家の秋のアンビエントミュージック定番セレクション

EVENING STAR:FRIPP&ENO

イーノとといえばフリップ。この牡牛座コンビはセットで考えたい。
一度スイッチが入れば偏執狂的ギターサウンドが
うねりをあげるところだが、こちらはフリパトロニクスを駆使したどこまでも優しいサウンドである。このアルバムとの付き合いは古い。随分、精神的に癒されてきたアルバムで、心が疲れた人にも自信をもって勧められる。
やはりこの大御所二人の相性は抜群だな。

Gone to Earth:David Sylvian

1枚目には歌ものがフィーチャーされ、
2枚目には明らかなアンビエント色の濃いインストが収録されたシルヴァアンのソロ第二弾『Gone to Earth』は二枚組だった。
なので、ここでは二枚の方を取り上げてみたい。
テーマは自然回帰とでも言えばいいのか。
その曲名、タイトルからも伺える。
シルヴァアンの叙情的なミニマルギターに
フリップのフリパトロニクスがソロを取り
ビル・ネルソンの叙情ギターもところどこで鳴っている。
じわじわと静かに盛り上がってくる内容で
静謐ながら、どこか強い生命感の躍動を感じる仕上がりで、
当時グルジェフの思想に傾倒していたというデヴィッド自身の
宗教観のようなものが色濃く反映された
全体的にとても内省的なサウンドが展開されている。

Garden Of Paradise:Steve Hillage

非常にイマジナリーでサイケデリックなサウンドで、
夢見がちなエレクトロニクスを駆使した音の万華鏡といった世界が展開されている。
元ゴングのスティーブ・ヒレッジ。
元祖アンビエントテクノとの呼び声も高い。
ジ・オーブのアレックス・パターソンがクラブでこの音楽をかけていたことから交流が始まったという。
その意味でも、80年代以降のテクノ、アンビエントシーンにおいて先駆けとして、重要な位置付けのアルバムだと言える

Mercuric Dance:細野晴臣

アンビエントの大家、日本にはこの人がいる。
このアルバムはどこか地味で細野アンビエントの中でもあまり知られていないアルバムかもしれない。ぼくはこれをカセットテープでもっていたな。
水脈を辿った錬金術パワーはマーキュリーに象徴され、
そうした息吹が静かに脈打つアルバムで
どちらかと言えば精神性の強い音楽に思える。
当時、交流の深かった中沢新一の影響もあるのだろう。

SAKURA:Susumu Yokota

アンビエントだけのくくりでは紹介しきれない
ヨコタススムのアンビエントアルバム。
時節は真逆だけれど、いつ聞いていも新鮮で
発見のあるエレクトニクスを駆使した創造的なアンビエント作品になっている。

SPA ASIA:久保田真琴

久保田真琴の、夕焼け楽団とは一線を画するこのヒーリングシリーズはどれもが素晴らしい。
単なるメディテーションミュージックでもなく、一本の映画をみているような、そんな感覚に引き込まれるストーリー性が魅力的である。公的にも私的にも、玄人受けする選曲で、さすが久保田麻琴である。

The Campfire Headphase:Boards of Canada

スコットランド出身のボーズオブカナダ。
マイケル・サンディソンとマーカス・イオン兄弟のデュオ。
アンビエントといってもエレクトロニカ、ヒップホップなど様々なジャンルの融合が昇華されたアルバムで強く映像的なものを感じさせるのがボーズ・オブ・カナダの特徴か。

Inventions for Electric Guitar:Manuel Göttsching

アシュ・ラ・テンペルのリーダーでもあるマニュエル・ゲッチングのソロアルバム。
ギターのオーバーダビングを駆使して電子音とともに、ミニマルな音風景が展開される。やがてテクノハウスの創始者として名をあげることになろうとは思わなかったな。

Endless Summer: Fennesz

秋だというのに終わりなき夏の音とはこれいかに?
気だるくそしてとんがった音の形が見える。
アンビエントの新しいカタチなのかもしれない。
クリスチャン・フェネスのフォーキー・エレクトロニカの傑作アルバム『Endless Summer」。
音そのものに季節感が宿っているのは否定しないが
もちろん、秋に聴いてもその良さは変わらない。
グリッジノイズの向こう側から哀愁のギターメロディが聞こえてくる。
これぞランボーが叫んだ、太陽とつがった海のような音楽なのかもしれない。

エリック・サティ:新・ピアノ作品集: 高橋悠治:

最後はちょっとアンビエントというイメージから離れるかもしれないが、、家具の音楽を提起した元祖アンビエントと言えなくもないサティの楽曲を、日本でのサティ第一人者高橋悠治のニューレーコディングで〆たいと思う。
かつてあれほどまでにサティブームが吹き荒れたものの、今はちょっと飽きられてしまったか。
いや、そんなはずはない。というところで、ここにはサティ愛好家ならずとも良質な耳を持ってさえいればきっとその優雅な音に前に
ひれ伏すことは間違いあるまい。そんなわけでサティ。やっぱりいいのだ。

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