チルアウト、モンドなアウラ

MONDE

エキゾチックな顔立ちですね、
なんて言い方をする。
彫りが深いというのか
日本的ではない、というのか
それは概ね褒め言葉であり
日本人的ではない、という意味では
ちょっとした神秘性を伴ったニュアンスがあるのだと思う。

その名もモンドミュージック。
モンドとはイタリア語で“世界”を意味する言葉だが
数奇で独特な、というニュアンスを含みながら
モンドミュージックはイージーリスニングをより洗練させ
どこかビザールで、どこかキュッチュで
それこそエキゾチズムを刺激するような空気を持った音楽のことで
ワールドミュージックともまた響きが違う。

そんなモンドミュージックは必ずしもチルアウトとは限らないが
自分の中では、モンドもチルアウトも、ラウンジもアンビエントも
いうほど差がなく聞いており
それらをひっくるめた音楽をたえず想起しながら
自分の好みの音をいつも探し求めている。

ここではそうしたモンドミュージック兼チルアウト兼ラウンジ兼・・・
とにかくそうしたものをセレクトしてみた。

我が家のチルアウトミュージック定番セレクション:其の参

MONDO EROTICA :JUN MIYAKE

Jun Miyake – Flesh for Eve

リオ五輪 閉会式での『君が代』の斬新なアレンジで
世間をあっと言わせたのが三宅純。
出会いはずっと遡る。
1993年の『星ノ玉ノ緒』を聞いて以来その感性の虜になった。
元は日野皓正に師事しようと門を叩いた
ジャズトランペッターだがCMから舞台音楽まで
国際的な場で活動を続ける音楽家だ。
おそらく無意識に彼の手がけたCM音楽なども耳にしているはず。
この『MONDO EROTICA』は
場所、時空を一瞬にして自在に駆け巡る自由さにあふれ
壮大なロマンを感じうる音になっている。
国際的に評価されるのもうなづける
真のクリエーターの仕事がここにある。

SYMBOL:SUSUMU YOKOTA

Symbol Of Life, Love And Aesthetics · Susumu Yokota

ブライアン・イーノの再来などと言わしめた実力者で
孤高ながら多産で革新的なアーティスト、ヨコタ・ススムは
エレクトロニカというジャンルには収まり切らず
どのアルバムも創造的かつ野心的な音に満ち溢れており
聴くごとに驚きを禁じ得ない。
残念ながら2015年に他界しているが
今こそ、ヨコタススムは再評価されるべき
注目すべきミュージシャンである。
ミニマル音楽への讃歌であり、
40数枚のリーダーアルバムの中でも
もっとも好きなアルバムの一枚で
個人的には一二を争う出来映えだと思っている。

Selected Ambient Works 85-92:Aphex Twin

We Are the Music Makers · Aphex Twin

エイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェームスは
12歳の頃から作曲をはじめた早熟の天才で
これは記念すべきファーストアルバムとしてその名を刻んでいる。
グルーブはあってもどこまでも静かに息づいており
インテリジェンスを感じさせながら、
未来への萌芽が顔を覗かせるリチャード・D・ジェームスの才能を感じさせる。
以後、自在に展開してゆくエイフェックス・ツインの原型が
じわじわ伝わってくる名盤だ。

Out of Noise:坂本龍一

坂本龍一 : Glacier

教授自体の興味やこれまでの楽曲を聞けば
当然モンドな音はいくらでもあるのだが
このアルバムにはチルな要素とモンドの要素に
実験性と宗教的な空気さえ漂う。
フィールドワークによる音なども取り入れながら
コンテンポラリーなアンビエントミュージックとして
教授の活動の新たな方向性を端的に示したアルバム。

A Rainbow in Curved Air:Terry Riley

Terry Riley – A Rainbow in Curved Air

まず、テリー・ライリーの名を知らしめたのは『IN C』
続いてこの「A Rainbow in Curved Air 」ではさらに親しみやすさを増し
リラクゼーション効果を伴っての反復音楽が
幾重に重なって洪水のように押し寄せてくる。
インド音楽や民族音楽に影響を受けながら
瞑想的かつサイケデリックな音の曼荼羅模様としての音楽体験は
あたかも強烈なドラッグ体験以上のものを想起させてくれる。

INTAGLIO:濱瀬元彦

Motohiko Hamase – Symptom

濱瀬元彦こそはフレットレスベースの匠と言っていいだろう。
80年代に発表したアルバム『INTAGLIO』は
当時はアンビエント、ニューエイジミュージックのカテゴリーに
入れられてしまっていたが
今聞くとジャズ的な要素を強く感じる。
ベースが入ってくるまでは確かにミニマルミュージックの類だが
濱瀬のベース音が徘徊するあたりで有機性が増して
どんどんグイグイ迫り来る音圧に圧倒される。
リマスターではなく再レコーディングされ
数段の進化を感じるアルバムに仕上がっている。

Cluster & Eno : Cluster & Eno

 Cluster & Eno – Ho Renomo

初期クラフトワーク、D.モービウスとH.J.レデリウスによるユニット、
クラスターとのコラボレーション。
イーノはソロも素晴らしいが、
誰かと組んだ時の方がより魅力的だ。
エモーショナルで叙情的なアナログシンセの音の広がり
無国籍ながらヒューマンテクノの素晴らしさを
じんわり感じるテクノ〜アンビエントの名盤。

サヌカイト―古代石の自然律:土取利行

ゆらき · Toshiyuki Tsuchitori

主に四国の讃岐地方で産出され
その音の響きから通称カンカン石と呼ばれるサヌカイト。
その不思議でその冷涼な響きは木琴でもなく鉄琴でもない。
縄文弥生期には人々の生活道具として愛用された
その石が伝える魂の波動を感じながら
時空を超えた古代の息吹に想いを寄せる。
この魂の鎮魂歌を奏でるのは
日本有史以前の音楽に造詣の深いパーカショニスト土取利行。
地元香川出身でかつては阿部薫やデレク・ベイリー
あるいはミルフォード・グレイブスなどとの共演で知られる。
激しいフリージャズのドラマーが行き着いた先には
まさに日本の心の原風景が広がる。

うたかたの日々:MARIAH

心臓の扉 · Mariah

サキソフォニスト・清水靖晃を中心に
凄腕のスタジオミュージシャン達によって結成されたマライアは
ジャズでもフュージョンでもない無国籍で
カテゴライズ不明な音楽を奏で計5枚のアルバムをリリースして解散。
まさに、モンドミュージックの走りと言っていいかもしれない。
中でも『うたかたの日々』は最高傑作で
ここ最近ではレコードコレクター達の間でも話題になり
海外からの評価も高まって
Palto Flatsというニューヨークのレーベルから再発された。
サウンドに合致した奥平イラによるジャケットワークもまた素晴らしい。

L’ Homme A Valise(鞄を持った男):マーク・ゴールデンバーグ

Mark Goldenberg “Queen Of Swords”

サントリーローヤルウィスキーのコマーシャルに使用され
「こんな男ちょっといない」という
詩人ランボーをモティーフにした
その斬新な映像とともに鮮明に記憶されている
アメリカ人のギタリスト、コンポーザー
マーク・ゴールデンバーグによる
エキゾチックな旋律は今聞いても素晴らしいと思う。

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