デヴィッド・ボウイ特集2

DAVID BOWIE

ロピュ家の定番ボウイPVセレクション

引き続き、ボウイ特集を続けたいと思います。
本当は、今日が誕生日のスコット・ウォーカーの記事を
アップする予定だったんだけど
スコット・ウォーカーはまた日を改めるとして、
今日はボウイの、YOUTUBEからのソングリストを書いてみよう。

ボウイの現存するPVの数が一体どれぐらいあるのか
実際には把握してはいないのだが、
色々見直していると、
この人は本当に、きちんと自分の作った曲を
しっかりフォローしている人だな、ってことに
改めて感動を覚えるのであります。
(作ったら作りっぱなしって人も多いから・・・)
この辺りがカプリコーンスターとしての生真面目な資質を
如実にものがっているのかもしれないな。
その上、クオリティも高いところで、
映像表現ということにこだわっているから、素晴らしい。

確かに、ダリやピカソ、デュシャンという巨人たちは、
美術という分野では天才だったけれども、
ボウイのように、楽曲と映像併せ持った表現もまた、
いかなる美術界のスターたちの功績にも引けを取らない。
単純な比較そのものには全く無意味だけれど、
いやはや、やっぱりすごい人だったと改めて思うのであります。
曲よし、歌詞よし、パフォーマンスよし。

そんな現存のPVの中からのベストチューンを20曲選ぶとしよう。

「Ashes To Ashes」From『Scary Monsters』

まあ、何と言ってもこれでしょう。
アートPVの傑作と称されるのがこれ。
デヴィッド・マレットとボウイの共作で、
何と制作費25000ポンドなり。
数あるボウイのPVの中でも
コンセプトから映像演出に至るまで、素晴らしい出来だと思う。
まるで寺山修司あたりが関わっているような、
そんな幻想的雰囲気がありまするな。
シュルレアリスティックでありながらも
そして、トム大佐はジャンキーだった!ってなところで
どこか哀愁が漂い、曲のオリジナリティを損なわずに
完全に独立した映像美を見せつけられる思いがする。
もちろん曲自体が素晴らしい。
まさにニューウェイブノスタルジアを掻き立てるナンバー。

「China Girl」 From『Let’s Dance』

これもデヴィッド・マレットの監督作品。
ヴィデオとして、アート性が強い訳でもないし、
かと言って手の抜いたものでもないし、
そこそこコマーシャルで『Let’s Dance』で
ようやく大衆にうまくなじんだ感じが
このPVからも十分伝わってくるんじゃないだろうか。
いわゆる80年代のPV時代を象徴する映像だと思う。
曲はイギーに向けて書いた曲だけど、
ボウイが歌うとやはり色気が増す気がしている。

「DJ」 From『Lodger』

そんなに金をかけなくても
そこそこ面白いものは撮れるんだよ、って感じがする王道的な感じのPV。
曲がかっこいいから、まあ許される遊びなんだろうね。
とは言っても、当時じゃ群を抜いてアーティスティックなものを作っていたと思う。
余裕が感じられるのは、ボウイの充実期の音があってのワザ。
曲はニューウェイブへと続くとんがった音作りで
エイドリアン・ブリューの炸裂したニューウェイブなギターソロは聴きものだ。

「Heroes」 From『Heroes』

「ヒーローズ」は曲自体の良さがまずあって
pvなんて別に必要としない曲でもあるし、
何なら、ライブ映像そのまんまでも感動するんだけれども、
時間がなくて、こうなったのか、
それとも、まあこれがベストだと踏んだのか?
ビデオとしては特に語るべきものがない。
ただ、そこに立っているだけで絵になるってことを
雄弁に語っているのが秀逸なPVといえなくもないか。

「Where are we now? 」 From『The Next Day』

晩年に撮ったPVの中でも実に手の込んだ映像感満載なのが「Where are we now?」
人形劇を演出するインスタレーションで有名なアーティスト、
トニー・アウスラーが彼のスタジオで作っただけあって
ヘンテコなオブジェなんかも写り込んでいるが
何と言っても人形が映像の前をぶんどって
ボウイと女の顔だけが映像を使うってのも実に奇妙で面白いアイデアだな。
で、この女の人はビョーク?
なんていう噂が立ったみたいだけど、
監督であるアウスラーの妻であるジャコリーン・ハムフリーズだということだ。

「Blue Jean」 From『Tonight』

かつてのような音の深みは随分薄らいだけど、
反対に、曲自体は随分わかりやすくさらにポップになり、
物語性、演劇性が増したこのころのボウイ。
ジュリアン・テンプルと組んだ21分に及ぶ
『Jazzin’ for Blue Jean』のワンシーンを飾っている曲。
演じることはお手の物だな。
そちらの方も益々磨きがかかっている。
このころから、まるで映画の一コマのようなPVが増えていった気がする。
彼の本質は根っからのアクターというわけなんだろうね。

「Wild is the Wind 」From『Station  to Station』

全編がモノクロでなかなか渋い映像だ。
歌と演奏メインで仕掛けも特にない。
曲も渋くって、ニーナ・シモンのカバーをしっとり、
じっくり味わうようにやっている。
ニーナ自身も感心しリスペクトを贈るボウイの歌。
こういうのを聴くと、ロックだけじゃないんだよな。
本当にレンジの広いシンガーだなあと思うな。
こういうボウイも捨てがたい魅力がある。

「Space Oddity」From『Space Oddity』

これが本当に50年前の音だろうか?
メロディ、展開、コード進行、ハーモニー。
そして歌詞・・・
どれをとってもドラマチックで古さを感じさせない大好きなナンバー。
初期の傑作だというだけではなく、
生涯を通じても名曲の一曲に数えられるだろう。
アコギか片手に眉を剃った半分ジギーを捉えた
ミック・ロックによる低予算PVだけど、
これはこれでいいな。

「Life On Mars 」From『Hunky Dory』

美と醜の間にある派手目なメイク姿のボウイ様。
道化的というべきか、実に妖しい雰囲気を醸し出してはいるけれども
ある意味、楽曲が正統派でフランク・シナトラばり?
の美しい曲だから、
今見ると、その辺のギャップが面白いのかもしれないな。
でも、これを普通に撮って歌うだけだったら、
全然面白くはないだろうな。
まだPVというものが大々的に展開される以前のヴィデオ。
この辺りは全てミック・ロックが監督している。

「Oh You Pretty Things」From 『Hunky Dory』

1972年、BBCの「OLD GREY WHISLE TEST」の映像より。
まだプロモというものが定着していない時代の貴重な映像だ。
『Hunky Dory』ってアルバムは
もうちょっと評価されてもいいと思うぐらい、
名曲揃いじゃないだろうか?
ちょうど、ゾーイが生まれて幸せの絶頂期だった当時のボウイには
エキセントリックなムードはないと言っていい。
ピアノを弾いてうたうボウイが新鮮だな。
バックのメンバーもいかにも70年代初頭のブリティッシュロックバンドの雰囲気で
淡々とサポートに徹しているのがクールだ。

「Rock ‘N’ Roll Suicide」From『Ziggy Stardust The Motion Picture』

1973年のHammersmith Odeonでのライブから。
収録は『Ziggy Stardust The Motion Picture』からで
ラストを飾った「Rock ‘N’ Roll Suicide」を。
この曲はまず外せない一曲だ。
アルバムの中でもタイトルチューンより好きな曲。
単独のPVは存在しないけど、このライブ自体が本当に素晴らしくて、
この会場で、生で時間を共有した人たちには本気で嫉妬してしまう。
興奮したファンたちがボウイに抱きつきても
嫌な顔などせずに、余裕でかわす神のようなロックスターがいる。
真っ赤なライトに照らされ、上半身はほぼ裸といっていい
スケスケの衣装で、まるで爬虫類のように
宇宙人のように、ステージ狭しと動き回る、
若き日のボウイの熱いパフォーマンスを
こうして見れるのは幸せなことだ。
これが半世紀近くも前のことだとはな・・・
そういえば、山本寛斎も鬼籍に入ったんだねえ。
この頃のコスチュームは感慨深いね。

「The Jean Genie」From 『Alladin Sane』

基本、ライブ映像を中心にした初期のPV作りで、
映像的に、どうのこうのはあまりないのだけれども、
脂がのった時期の生ボウイとスパイダーフロムマースの面々が
写っているだけで十分楽しめる。
チラチラ踊っているシリンダ・フォクシー嬢が挿入されるが、
彼女はアンディー・ウォーホルの映画で女優をしていたこともある人で、
何と言ってもロックグルーピーで
あのデヴィッド・ヨハンセンやスティーブン・タイラー
と結婚したことで有名になった。
ボウイのマネージメント会社で広報もしていたというから、
やれやれ、筋金入りなんでございますな。

「Be My Wife 」From 『LOW』

正直、これも特に映像が特にどうのってほどのものでもないし、
ギター一本弾くだけのシンプルなもので
お金も時間も全然かかっていないPVだけど
当時のボウイが醸す退廃的、厭世的、
気難しくてナーバスで、でも何かを抱えて生きている、
そんなオーラがまた貴重に思えてくる。

「Loving the alien」From 『Tonight』

このアルバムには正直言ってあまり語るに値するところがない。
ほとんど聞き返すことはないんだけれど、
この曲だけは好きだな。
PVの完成度も「Blue Jean」ほど高くなくて安っぽいんだけど、
キリコの絵から抜け出してきたようなそんな雰囲気が感じ取れる。

「I’m Afraid of americans」 From 『Earthling』

一編の短編映画のような出来のプロモ。
まるでスコセッシの映画を見ているような雰囲気がある。
これはなかなか面白い。
ボウイのアメリカ人に対する恐れがベタに表現されていて、実にわかりやすい。
きっと映画なんかも撮りたかったんじゃないかなって思わせるPVになっている。
曲はちょっとヘビーでパワフルだけど、
ロックサスペンスとしては出色の出来ではないだろうか。
センスを感じるな。

「Look back in Anger」From 『Lodger』

ベルリン三部作で、一番多くPVが存在するのが『ロジャー』からの曲。
女装したボウイが見られる『Boy Keep Swinging』の方がPVとしては面白いんだけど、
曲が好きなので、こちらをとろう。
アート志向の強いボウイをきっちり主張しながら、
音楽を損なわない、ほどほどの質を絶妙に保っている。
ジャケットではエゴン・シーレの引用をしていたけど、
映像に間違いなくコクトーの影響が見てとれる。
そういえば、三島のポートレートを描いていたのも
この時期だったっけな。

「Little Wonder」From 『Earthling』

『Earthling』ってアルバムは当時流行ったジャングルというか
ドラムンベースサウンド満開のご機嫌なアルバムなんだけど、
当時はなんとなく流行りっぽくて好きになれなかったし
あまりちゃんと聴かなかった。
でも今聞くと改めてカッコイイなと思う。
で、この『Little Wonder』だけど・・・
ちょっとグロテスクで、人を選ぶ映像だけど、
実に斬新な感じを受ける。
フローリア・シジスモンデのテイストがモロ支配しているけど
ボウイの中には確実に、シュールレアリスティックな嗜好が
脈々と流れているのだと思う。
これはサウンドに実にマッチしていて本当に面白い出来。
昔の自分のイメージをうまく取り込んだりしながら
シュールだけども、お茶目でポップなボウイの一面を作り上げている。

Sue (Or In A Season Of Crime)

遺作『ブラックスター』からの一曲。
「Lazurus」では死に向きあったシリアスな感じが
ある意味、哀しく痛々しかったけれども
こちらは一転してモダンだ。
フィルムノワールな雰囲気まで漂わせた示唆に富んだPVで、
動きのあるタイポグラフィが実にしゃれている。
さすがはトム・ヒングストンのセンス!
こういうセンスが憎いんだよね。
マリア・シュナイダー・オーケストラのジャズテイスト満載の
ご機嫌のサウンドとのマッチングが
絶妙でクールなんだけども、
このまま何時間でも見続けられるような陶酔感さえ漂わせている。
ああ、これってラストレコーディングってわけなんだねえ。
貴重なレコーディング風景が胸を打つ。

Under Pressure Queen

クイーンとの共作だから、特別枠としておこうか。
好きなことに変わりがないからね。
ボウイとフレディ、個性の全く違う天才二人のデュエットに心踊る。
で、PVがなかなか秀逸なので、ピックアップしないではいられない。
別にボウイの趣味ってわけじゃないんだろうけど
『戦艦ポチョムキン』や『吸血鬼ノスフェラトゥ』なんかの
サイレント映画を引用していて面白い。
曲はどちかといえばクイーン色が強い気がする。
ジョン・ディーコンのベースラインが印象的なナンバーだな。

「Lazarus」From『Blackstar』

「私は目には見えない傷を負っている」と歌い、
自らの最後のメッセージを届けようとする
ボウイの痛ましくも、美しいPV。
自らの死を意識したこの「Lazarus」のPVを見ていると
『オルフェの遺言』で同じく、
自分の最期を託したコクトーのイメージにも重なってきて
いよいよもって、自らの最期をいかに準備していたのがわかる。
彼ほどのスターはもう二度と現れることはないんだろうな。
同時代に生きてこれたことに感謝。
ありがとう、最高のロックスター、デヴィッド・ボウイ殿。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です