『門戸無用』MUSIQ VOL.7

[門戸無用]MUSIQ

気がつけば、今年もあと一ヶ月あまり。
早いなあ。
実に短かった気がしている。
光陰矢の如し。
歳を重ねれば重ねるほどに、実感するのであります。
けれども、わざわざこの世の摂理に歯向かってもいいことなんてない。
そんな気はサラサラない。
変に若ぶってみることもないし、
今更、自分らしくないことをおっぱじめることもない。
他人と比較して、人をおし分け前にゆく気も起こらない。
新しいことにはドンドンチャレンジはしたいけれど
この自分の立ち位置で、しっかりと地に足をつけて
これまで通りにやっていきたい、ただそれだけのこと。

そんな折にも音楽はいつだってそばにある。
なきゃ困る。
音楽というものに支えられ、励まされ、そして癒されてきた。
ありがとうミュージック。
ミュージックありがとう。
そのスタンスはこれからも変わらない。
さあ、もう少しで新しい年に切り替わる。
その前に、まずは自分をいたわってあげなきゃ前には進めない。
自分がなきゃ、始まらない。
オーバーホールをかねて、年末はいつも以上にのんびりと
温泉にでも浸かってこの一年やってきたことを見つめ直して、
新たな年を迎えたいものだ。

我が家の秋から冬への定番セレクション 其の参

●THE NIGHTFLY:Donald Fagen

説明不要の名盤。スティーリー・ダンのアルバムもいいけど
このドナルド・フェーゲンのソロは高校生の時からのお気に入り。
おそらくダンディでシャレた大人の男たちで、
この音楽を知らないものはいないんじゃないか、
なんて思わせるぐらい、ハイセンスで渋いのだ。
個人的には、夜のドライブミュージックNO.1にもあげたいぐらい、
このアルバムには夜景が似合う。
しかも田舎じゃダメだ。
都市の喧騒を抜い、きらめく都市の灯りを記号のように瞳に写しとりながら、
優雅に耳を傾ける音楽とでもいうのか。
このアルバムが実にクールなのは、オーディオマニアも唸るような
録音の素晴らしさに後押しされている。
そんないい再生装置は持ち合わせていないが、そのうち、
このジャケにあるようなターンテーブルで、これを再生しながら
ダンディをひとりごちてみたい。

●Climate of Hunter:Scott Walker

WALKER BROSとして一世風靡。
あとはカルトシンガーの王道へ?
なんていわれ方をする孤高のアーティスト、スコット・ウオ-カー。
これは長年の沈黙をやぶっての80年代のアルバム。
わたくし、ここではじめて出会ったわけですが、
難解な歌詞、荘厳なオーケーストラレーションのソロ作品から、
ちょっとブルージーなロックサウンドは文字通り隠遁者にふさわしい、
神秘のオーラに引き込まれまして。
ドラマチックなウォ-カー節はここからさらに
実験的なまでのイバラの道を行くことになる。

●Dark Dear Heart:Holly Cole

アルバムを出すごとに歌手からアーティストへと
変貌をとげて行ったホリ-・コール。
これはターニングポイントのようなアルバム。
スタンダードからマニアックなものまで
自在に歌いこなせる彼女の成長と清澄ぶりをとくとご静聴あれ。
ジョニの名曲「River」をカバー。
そこではなんとハッセル爺ちゃまの
枯れすすきトランペットの音色も聞こえてくるな。

 ●Late for the Sky:Jackson Brown

スコセッシの『タクシー・ドライバー』で
このタイトル曲が流れてきて以来、
僕の胸に刺さったジャクソン・ブラウン。
そのあとにジャケットを見てまた驚いた。
マグリットじゃないか。
これはまさにルネ・マグリット「光の帝国」じゃないか。
いったいどう繋がるのか。今でもよくわかってはいないけど
このアルバムが大好きなのは変わらない。

●Tranceformer:Lou Reed

NYの頽廃王子ことルーリードの2nd
ヴェルベットアンダーグランウド解散後
さほど評価の高くなかったファーストに比べ
ボウイとミック・ロンソンの力を借りてルーワールド全開。
全編に妖しい魅力を放っている。
一曲目「Visious」の毒々しいギター、
ウォーホル賛歌「Andy’s chest」や
ジャンキーの哀愁切ない名曲「Perfect Day 」
そしてルーの代表作「Walk On The Wild Side」
ドラック、同性愛、売春など、
NYの裏社会の闇に光を当てた名盤を聴かずして
年は越せませんね。

●風の歌を聴け:ORIGINAL LOVE

男からみてもかっこいい男としての存在感を誇る
田島貴男のワイルド感は
元祖渋谷系などと一言で片づけるにはあまりにもつまらない。
その圧倒的なオーラに包まれたオリジナルラブは
日本のポップミュージックのなかで
数少ない骨太感があり、真のソウルを感じさせる。
夜を疾走するダークなグルーブをキープしながら
どこかニヒルで甘いささやきを忘れない男。
ストレートなまでの直球として聴くと
火傷してしまいそうになる大人の美学がある。

●Saravah! Saravah!:高橋幸宏

YMOよりも前の幸宏さん。
以後のロマンティシズムは、
まさにこのアルバムとももに始まったともいえる。
26歳の若き日のヨーロピアン志向は
ピエール・バルーのサラヴァからの影響を受けている。
その記念すべきアルバムが
40年経って新たに取り直した歌がこれ。
当時のものもいいのだが、
このリマスターはある意味別物として聴けるし、
何より素晴らしいクオリティーに仕上がっている。

●Warm Your Heart:Aaron Neville

生きるハイヤーセルフ、あるいは守護天使。
あのイカツイ外見からは想像できないウルトラミルキーな
エンジェルヴォイスの持ち主、アーロン・ネヴィル。
聴いているだけで癒されるこの歌声は天からの贈り物だ。
一足早いサンタさんのプレゼント。

●1の知らせ: COMPOSTELA

元じゃがたらのサックス吹き。
ちんどん、といえば篠田昌巳。
コンポステラ名義での一枚目。
語源「星の野」といえば熱血の意かどうかはさておき、
中央線沿線の雰囲気がします。
ブラス系の暖かい音だけどやはり哀愁とパッションがあります。
今は亡きシノダ、大熊亘とか渋さ知らズであるとか、
はたまたSTRADAへと受け継がれるその魂は、
映画でいう小川プロなんかに通じるピュアネスがあるな。

●Bill Evans With Symphony Orchestra:Bill Evans

季節の変わり目、朝の目覚めのひと時は、
こういう音楽とともにありたい。
クラウス・オガーマン率いるオーケストラをバックに
ビル・エヴァンスがバッハやショパンの曲をやっている。
バッハの「VALSE 」フォーレの「Pavane」
ショパンの「Blue Interrude」
どれも素晴らしい解釈が施されている。
クラシック好きの人にもジャズ好きな人にも
このアルバムの叙情性は十分堪能できるはずだ。
まるで良質な映画音楽のようでもある。

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