『門戸無用』MUSIQ VOL.9

[門戸無用]MUSIQ

全く無意味な緊急事態宣言にしびれをきらした人間たちよ、
春はもう直ぐですぞ。
そこまで来ておりまする。
もうしばらく・・・
いや、待てないとおっしゃる?
いやはや、わかりますとも。
あたしゃ、一足先に春の祭典の準備に入っておりますぞ。

てなことで、三月は何かと忙しない。
そして落ち着かない。
でも、それがいいのです。
木々や草花だって同じ気持ちでしょう。

素晴らしき日常に、現れる春と言う名の貴公子。
なんかダサい表現だな。
まあいいか。
ちょっとやっつけ気味に書いておりますが、
音楽は嘘をつきません。
いい音楽は、それこそ、春には春の素晴らしい音を届けてくれるものです。

春本番が来たら、改めて、春コレを書きたいのですが、
これは三月限定の、プレ春コレ盤セレクションであります。
自分としては、もう少し、冬を楽しみたいところがあります。
冬なんて大嫌いだって?
まあまあ、その気持ちはわかりますが、
何事も、辛抱が肝心です。
その向こうに、素晴らしき開放感があるのですから。

一足先に春を纏うための我が家の三月コレクション

Mercy Street A Reminiscent Drive

これはまさにジャケットからして春っぽい。
A Reminiscent Driveの名盤「Mercy Street」、
フランスの、テクノレーベルF Communicationsの
アーティスト、プロデューサーでもある
ジェイ・アランスキーのソロプロジェクト。
インストものですが、とてもオーガニックなアンビエントものです。
俗にいえば映像的というか、イマジネイティブな音色で構成されており
荒れ狂う春の嵐に、部屋で静かに耳を傾けるにぴったりの一枚だと思うな。

み空:金延幸子

リアルタイムで聴いていたわけではないけれど、
最近、いろいろ素晴らしい日本のフォーキーな女の子たちが
がんばっているなかに混ざって、金延幸子というひとの歌を聴いています。
とても新鮮な声と、豊かにやせほそった曲のマッチングに引き込まれ、
はっぴいえんど世代のフォーキーミューズであることを納得。

Return To Forever:CHICK COREA

タイトル、ジャケット、演奏、全てが素晴らし過ぎる
チック・コリアを代表する一枚。
ECMレーベルの中でも名盤中の名盤ということで
何も僕があれこれ説明するような代物ではないけれど、
先日チックの訃報ととも最近よく耳しているアルバムだ。
個人的に、ソロよりは、エレクトリックマイルスバンドでの印象があって
好きだったのだけど、うーん、やっぱり、いいよなあ。
それにしてもエレピの音って、繊細だな。
ピアノとも違うし、もちろんヴァイブとも違う。
そして、このアルバムの中に漂う希望のようなものが
まさに、僕らに春を運んできてくれるようなそんな躍動感を感じる。
チックに関しては、僕は特集を組めるほど通じていないから、
徐々に、その軌跡を紐解いていくとするよ。

静かな生活:サンガツ

HEADZ、佐々木敦氏のレーベル「Weather」から
デヴューした当時から注目して聴いてきたけど、
常々、不思議な音楽だなと思っている。
音楽というのか、音響というのか、
まるで映画のサントラのようでもあるし、
一言で説目できるタイプの音楽ではないな。
インストだから、BGMとして流しても問題はない。
何でもかんでもポストロック扱いするつもりはないけど、
どうにも定義難しい音であることは間違いないし、
非常に、パーソナルな感性を大事にしているバンドだ。
2010年にリリースされたこのサード・アルバム『STILLLIFE』は
彼らの最高傑作だというのは間違いない。
ミックスの益子樹カラーが実にフィットして心地よい音に仕上がっている。
音は季節を選ばないけど、
やっぱりサンガツは三月に聴くのが旬のような気が当初からしている。
それって単なる思い込みなのかな?

The Stranger:Billy JOEL

長年、ひねくれ者として音楽を聴いてきた身としては
ビリー・ジョエルが好きだなんて、今まで人にいったこともないし、
正直、自分でもよくわからないんだけど、
自分でいろいろ名曲を選曲する際には、必ずビリーの曲が入るし、
なぜかこの季節の不安定な時に、よく聴いてきた気がしている。
とりわけこの『The Stranger』が一番フィットする。
改めて聴くと、いいアルバムだな。
「Just the Way You Are」なんか最高にロマンチックだしね。
都会的で、それでいてアダルトで・・・
なんだかベタすぎるけど、そういうのも悪くはないと今の僕は思う。
やっと大人になったってことなのかな?

A Salty Dog:Procol Harum

その昔、飲みにいったら、馬鹿の一つ覚えみたいに必ずといっていいほど
ソルティドッグを頼んでいたっけ。
グラスの周りに塩がついてるやつね。
ははは、単純な人間だ。
そして、まだやったことはないんだけど、
ブライトンかどこか、イギリスのしなびた港町の片隅のバーで
本場のソルティドッグを飲んでみたい、そんな夢があったなあ。
プロコルハルムはずっと好きだったけど、
どのアルバムが特に好きだとかいうこだわりまではなくて
じゃあ、というとこれになるんだな。
一番好きな曲は、何と言っても
ユーミンがカバーした曲でも知られる名曲「A Whiter Shade of Pale」だけど
この『A Salty Dog』を長年よく聞き続けている。
でもじっくり聴くとやっぱりいいアルバムなんだな、これが。
古き良きイギリスの香りがするってところがね。

ROMANTIQUE’96:PIZZICATO FIVE 

ピチカートの音はずっと好きで聴いているけれど、
どれが一番好きだとか、正直、そういった思い入れはないんだな。
アルバムでいうと『ベリッシマ』とか『カップルズ』あたりをよく聴いてはいたけど、
選曲の立場でいうと、この『ROMANTIQUE’96』ってことになるかな。
三月生まれの野宮さんの「三月生まれ」が入っているってだけのことだけど、
じっくり聴いてみると、なかなかいいアルバムだ。
何しろ、小山田圭吾、立花ハジメ、テイ・トウワ、参加メンバーも豪華だ。

リラのホテル: かしぶち哲郎

矢野顕子との共同プロデュース作品
いまは亡き元ムーンライダースのかしぶち哲郎さんの1983年のソロアルバム。
まばゆいなかにもアンニュイで気だるいムードがあり、
どちらかといえば、品の良いヨーロピアンな雰囲気がするけれど、
少し前の日本が有していた格式のような、凛とした佇まいを感じさせる名盤。
ムーンライダースのアルバムよりよく聴いているな。

A Distant Shore :Tracey Thorn

冬の音楽特集で、ベン・ワットの『NORTH MARINE DRIVE』を取り上げたけど、
別にこのトレーシー・ソーンの『A Distant Shore』だったところで変わらない。
要するに、ちょっぴり、センチでこそばい感覚というか・・・
それはどうしても春爛漫な感じじゃないんだよね。
なんとなく、三月の、春になりきれていない陽射しの中で、
ベルベットの『ファムファタル』なんかを聴くとね、
やっぱりたまんないわけですよ。
英国風情のほろ苦センチメンタリズム。
まあ、そのあたり、僕の青春ですね。
どうしても、避けて通れない音楽というやつです。

PRODUCT:BRAN-X

最後を飾るのは、ちょっと意表をついてジャズロック。
どうしてもBRAND-Xを聴きたくなる時ってのがあるわけですよ。
特に、今のような閉塞的世の中になればなるほどね。
これは、きっと男にしかわからんのだろうな。
この変態バカテク集団、プログレッシブジャズの、
なんというのか、もう常軌を逸脱した演奏の中、
恍惚とした気分の高揚感を味わうというのか。
まあ、だいたいプログレにしろ、ジャズロックにしろ、
男臭しかしませんからねえ。
とはいえ、このBRAND-Xは一度聞くと病みつきになる、
そんなイギリスの音楽集団なのです。
とりわけ、ベースのパーシー・ジョーンズのプレイには開いた口がふさがりません。
あのフィル・コリンズとの壮絶なリズム隊がこのBRAND-Xのウリですから。
問題なのは、どのアルバムを選ぶかだけで、
実を言うと、そこが悩ましい。
この三月に聴くと言うことを無理やりこじつけると
彼らのナンバーでもっとも好きな「DANCE OF THE IIIEGAL ALIENS」と言う曲を収録した
本アルバムということになりました。
誰かに薦めるなら、『LIVESTOCK』というライブ盤ですね、
圧倒的演奏力の前にひれ伏すだけです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です