音楽

お父さんのバックドロップ 2003文学・作家・本

中島らも『お父さんのバックドロップ』をめぐって

こういう親子ドラマというのが、実は好きだったりする。 お祖父ちゃん役のチャンバラトリオ、南方英二もいい味を出している。 昭和であれば、こういうドラマがいくつもあったし それをテレビを通じてふんだんに見て育ってきたのである。 最近じゃなかなかみられなくなっているというのもあるが、 これはこれで、しっかり笑いとペーソスが噛み合った情的ドラマである。 はっきりいってB級もB級ではあるが、そこは単なるB級には終わらない、 らも節というものが、随所に流れているのだ。

小さな恋のメロディ 1971 ワリス・フセイン映画・俳優

ワリス・フセイン『小さな恋のメロディ』をめぐって

誰にだってどうしても忘れられない、そして外せない映画というものがある。 といえば、そのなかに『小さな恋のメロディ』をあげぬわけにはいかない。 そう、ちょうど、メロディが金魚を公共の水場に解き放って眺めるシーンのように、 ただただその光景を眺めてみていたいのだ。 蓮華の花咲く野原を、どこまでも手押しトロッコで 地平線に向かって遠のいてゆくあのラストシーン。 そんな二人の姿を、ずっとずっと見ていたかったのだ。 そこは理屈じゃないのである

友だちのうちはどこ? 1987 アッバス・キアロスタミ映画・俳優

アッバス・キアロスタミ『友だちの家はどこ?』をめぐって

なんといっていいのか、こんな映画があるのだという思い。 それも全く意識していなかったイランからの贈り物。 イランという国が急に身近になった。 キアロスタミはそれ以後、巨匠の風格を醸し 我が国でもそのスタイルに魅せられ、多くの人に支持された監督である。 残念ながら、3年前の2016年にすでに他界しているが その残された作品は今尚みずみずしい輝きに満ちている。 キアロスタミでなければ撮れない映画ばかりが 燦然と残されている。

[門戸無用]MUSIQ音楽

『門戸無用』MUSIQ VOL.10

五月とかいてイツキ、じゃなくサツキと呼ぶ。 素敵な響きだな。 ウキウキするよ。 全国の魂の健全なるさっちゃん、サツキちゃんたちに贈る五月のポエジーは ずばり『YOU MAY DREAM』というわけさ。 ほんとせっかくのいい季節なんだけどなあ・・・ 新緑薫るこの季節、本来ならウキウキのGWで賑わうはずの街並みも ばかばかしい政府のグダグダの緊急事態制限とやらで台無しではござらぬか。

Je t'aime moi non plus 1976 Serge Gainsbourg映画・俳優

セルジュ・ゲンスブール『ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ』をめぐって

ここにはゲンスブールの屈折した美学が色濃く支配している。 つまり、ジュテーム(愛している)に対するモワノンプリュ(俺はちがう) という、なんとも逆説的な愛こそが、この禁断の三角関係に割って入るのだ。 いうなれば、波のように押し寄せる詩的な刺激である。 これこそがゲンスブール流アイロニー、ダンディズムである。

Ryuichi Sakamoto: CODA 2017 スティーブン・ノムラ・シブル音楽

『Ryuichi Sakamoto: CODA』をめぐって

坂本龍一の音楽は実に幅広い。 そのアルバムの中では、最も支持するのは 『B-2UNIT』当たりの空気感を 個人的には今尚敏感に想起しているのであるが、 その音のエッジたるや、到底病気を経た、 ある種覚悟を決めたリアルサカモトからは 程遠いような先鋭的な音で構成されている。 まさに教授たる名の全盛期の実験的、冒険的、野心的なサウンドに こちらも若き日の興奮が今も呼び起こされてはくる。

Richard Barbieri 1957-音楽

リチャード・バルビエリをめぐって

そんな未来を予言する、プロフィット5の達人を、 この地味なサウンドメイカーを、静かに讃えたいと思う。 それにしても、それぞれメンバーのミュージシャンとしての成長ぶりは ジャパン時代とは比べものにならない進化をとげているのだが ジャパン時代から、ほぼなにもかわることのない姿勢で地道に作り上げてきた このバルビエリの世界観こそは、ジャパンカラーを もっとも大事に継承しているような気がしてなんだか、安心するのである。

steve jansen 1959-音楽

スティーブ・ジャンセンをめぐって

デヴィッドの実弟として、ジャパン時代は 常に、一歩も二歩も引いた形で、縁の下の力持ちとしての域を出なかったが ドラマーとしての腕、ミュージシャンとしての進化には驚くべきものがあった。 もはや、ジャパン時代ですら、遠い昔のことのようになってしまったが、 最近では、エグジット・ノースという新たなバンド活動の場を見出し 独自の美学を追求し続けている。 あいかわらず、日本のミュージシャンたちとの交流も活発で 未だ絶大なるリスペクト、人気を誇る玄人好みのドラマーである。