映画・俳優

狂った果実 1956 中平康映画・俳優

中平康『狂った果実』をめぐって

それは監督中平康の力といっていいかもしれない。 市川崑と双璧のモダンでスタイリッシュな映画作家だが、 いまいちその扱いはぞんざいで、 どちらかというと過小評価の感の否めない作家である。 しかし、この『狂った果実』がなににもまして 世界の映画作家たちを狂気させた問題作であることは やはり、時代が変わっても事実として受け止めねばならないのだと思う。 いや、時代が大きく変わった今だからこそ、 見るべきものを改めてここに見出すことが可能なのではないだろうか。

エル・トポ 1971 アレハンドロ・ホドロフスキー映画・俳優

アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』をめぐって

ちなみに、エルトポとは、モグラのことである。 「モグラは穴を掘って太陽を探し、 時に地上へたどり着くが、 太陽を見たとたん目は光を失う」という冒頭の詩句で始まるが モグラとは、いうなれば愚かさの象徴の意味をもつが、 エル・トポは様々な体験を通じ、 ここではその愚かさを乗り越えてゆく神そのものなのである。

ラストムービー 1971 デニス・ホッパー映画・俳優

デニス・ホッパー『ラストムービー』をめぐって

これは傑作だとか幻のムービーだとかいった 安直な言葉で片付けられない映画として記憶されるべきだ。 映画というものに、ひいては文明や資本主義社会への挑戦でもある。 その意味で、『ラストムービー』は 『イージー★ライダー』以上に重要な作品であり 以後デニスの運命を、よくもわるくも狂わせた作品として はっきり刻印しなければならない。 デニス・ホッパーにしか撮れない映画として。

つめたく冷えた月 1991 パトリック・ブシテー文学・作家・本

パトリック・ブシテー『つめたく冷えた月』をめぐって

かくして、ブコウスキー文学の不思議な清々しさ、 胸のすくような猥雑なざわめきが、 この『つめたく冷えた月』にも程よく溶け出しており、 どこか憎みきれない二人の中年男の哀愁の サイテーながらも、サイコーの幻影とともに酔いしれ そんな弛緩した瞬間に、ふと心地よさを覚えたりするのを 自覚するのである。

The Tenant 1976 Roman Polanski映画・俳優

ロマン・ポランスキー『テナント』をめぐって

それにしても、いくら実際の体験から生まれているとはいえ、 ポランスキーのこうした強迫観念めいた演出は 実に恐ろしく、見事に引き込まれてしまう。 それは『反撥』『ローズマリーの赤ちゃん』にも十二分に発揮されていたが 『テナント』ではそれを見事に当人が演じることで よりリアルで逼迫した空気が張り詰めている。

Gran Torino 2008 Clint Eastwood映画・俳優

クリント・イーストウッド『グラン・トリノ』をめぐって

けれども、この映画のテーマは 実を言うと正義などと言う安っぽい、 と言うと語弊があるけれど、 そんな大義名分はさておき、 孤高に生きていてきた退役軍人としての心の傷、 人生の痛みや重みが 人種も年代も違う人間への真の友情として描かれ 奮い立って自身の天寿を全うしたこの老アメリカンの生き様に、 心打たれるのであった。