『LIGHTNING IN A BOTTLE』のこと

LIGHTNING IN A BOTTLE 2003
LIGHTNING IN A BOTTLE 2003

魂の稲妻、我はブルーズに打たれし

夏はフェスの季節・・・
音楽の熱さは真夏の熱さそのものだ。
事情でなかなかフェスに参加できないモヤモヤを
映像ではらすとしよう。

その昔、『LIGHTNING IN A BOTTLE』を
ライブ会場ではなしに、映画館で
しかもコンサート用PAシステムでの上映にて鑑賞した
その時の感動をちょっと思い出していた。
あれは本当にすんばらしかった。
これぞブルーズ、かっこいい。
ビーエルユーイーエス、ワオッ、BLUES。

その『LIGHTNING IN A BOTTLE』をまたDVDで鑑賞していたところだ。
ちょうどブルーズ生誕100年
「イヤー・オブ・ザ・ブルース」の催しの1つとして撮影された本作は
あの『ラスト・ワルツ』でおなじみの
製作総指揮マーティン・スコセッシのよる音楽ドキュメンタリー。
ラジオシティ・ミュージックホールにどれほど歴史があるのか、
また、このイベントすべての収益が、
若きミュージシャンたちの育成のためにブルース基金として使われた、というようなことも、
この映画を通じて知ったことだった。

とくにブルーズばかりをふむふむ聞いているわけではないし、
素晴らしい演奏をし、素晴らしい歌声を聞かせてくれた、
これらすべてのアーティストをよく知ってるわけでもない。

でも、みりゃあわかる、聞きゃあノックアウトされちまうよな。
これだけのメンツ一同に会すってのが奇跡だとしても、
それがこうして記憶されるっていることは事実だ。
105分間のすべてが本当にすばらしいんだから。

そういういいかたは、なにもわかっちゃないヤツの言い草さ、
というヒトもいるかもしれない。
でもね音楽、ことブルーズていうのは魂の交信なんだ。
ロックやヒップホップの原型たるブルーズ。
かつて、祖国アフリカを離れた黒人たちの魂が、
いまもなおこうして、世代を超え唄い継がれている。
そのバイブレーションを感じるだけで十分だと思うね。
歴史をなぞるように、アフリカ大地の映像に絡めてこう語られる。

彼らは私たちの全てを奪った。
でもひとつだけ奪えなかった物がある
私たちの「声」だけは。

そのナレーションの主、アフリカ・ベニン出身のアンジェリーク・キジョーに始まり、
大御所BBキングで〆る。
最後は、BBがボニー・レイットとロバート・クレイに囲まれ
「Paying the cost to be the boss」で終わるまでの至福の体験。

アンジェリーク・キジョーがジミヘンの「Voodoo Child」を唄い、
そこへジミヘンが憧れたバディ・ガイが、
先の演奏で疲れていて、しょうがねえなあ、
という調子でステージに駆り出されるが、
そりゃあ、いったんステージに立てば本家の本家、
ホンモノだから悪かろうはずがない。

挿入された映像では、ジミヘンが、
バディのステージを食い入るように魅入っているシーンがあって
なんともステキなんだよね。

王様のようなキラキラ椅子に座る迫力満点のソロモンバーグや、
これぞゴッド姐ちゃん、ていうか、
ゴッドおばちゃまルーシー・ブラウンの貫録にはコトバがない。
みんな旧交を温めたり、近況を求め合ったりしながら、
実に楽しいそうなんだな。

おやまあ、ぼくにすれば懐かしい、
なぜかここにロック野郎スティーブン・タイラー&ジョー・ペリーがいる。
がんばってるけどまるで子供じゃないですかぃ!
だって、89のおじいちゃん、
デヴィッド・ハニーボーイ・エドワーズに
あんな風にアコギ一本渋く決められりゃ、そりゃあね。

クールだけど、渋いDr.ジョンは終始裏方、
で、えっ、と飛び出したのはデビッド・ヨハンセンか、
この熱唱、なんか可笑しさこみあげるのは容姿のせいかな。
テンガロンハットに、ウエスタンで登場。
マルチプレーヤー、クラレンス・ゲイトマウス・ブラウンの巧みなギタープレイは最高。
と思えば、 ボニー・レイットのギュイ~ンと唸るボトルネックにもしびれるし、
相変わらずいかついネヴィル・ブラザーズでガーン、ドーン。
でも、個人的にはインディア・アリーがやった
ビリー・ホリデイの「奇妙な果実」が
実にしんみりとぐっときましたねえ。
バックの映像もショッキングでしたわ。

ただの音楽ムービーでは終わらない、
時折うまく挿まれた記録映像やインタビューによって、
ブルーズ、すなわちアメリカ黒人の魂の記憶を呼び覚ますような仕掛けになっているってわけだ。
これはThe BANDの「ラスト・ワルツ」同様、
のちのち永遠に語り継がれていくんだろうなあ。
そんな感動が生きるために万人に必要なものだよ。
そして、ブルーズの根源をふとかんがえながら眠りについた。

それはスタイルなんかじゃないってことだ。
最高のものはいつも、多くの悲しみや苦しみをのりこえて、
そして、いとも簡単に差し出される。
素晴らしい!
そこで一言、やあみんなゴキゲンよう! 
ってなことなんだよなあ。

うん、音楽っていいな。

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