災害や豪雨はべつとして
雨が降ったと言うぐらいで大騒ぎして
盲目的に雨を忌み嫌う人は多い。
濡れるということそのものにひどく過敏で
そもそも天気予報に一喜一憂する人ばかりである。
ぼく自身は雨の日がさして嫌いではない。
濡れることにさほど抵抗などない。
六月は梅雨の時期で、
一年を通じてもっとも雨に降られる時期である、
と言うのは今に始まった話しでもないから
雨の日が待ち遠しかったりする。
一雨くるだけで風景が一変する。
インスタグラムなどが注目されるなか
雨後のあと、みなれた景色を写真にとってよく観察するがいい。
きっと思わぬ発見があるだろう。
もっとも、それを感じられるのは
感性次第で、そうした人種は
多かれ少なかれ詩人と呼ばれる
限られた人間達が持つ特権なのかもしれない。
そんなわけで、雨の日に聴いてしっくりくる音楽。
雨を厭わず、愛おしくなるような音楽をセレクトしてみよう。
ちなみに、同じ雨に日の音楽といっても
梅雨時期の雨と秋雨、春雨、
それ以外の時期の雨とはニュアンスが違うように思う。
六月の雨は、いわば定番の雨であり
次に控える夏の前座でもある。
よって、重たさ、暗さと言うマイナスをあまり感じさせない。
それでも雨期が長く続けば
人はストレスをため、ため息をつく。
自分としては、そんな梅雨時期でさえ
こうした音楽があれば快適に過ごせるのだ。
我が家の雨の日の定番セレクション
Dots And Loops: Stereolab
深緑:AJICO
UAとベンジーのプロジェクトAJICO。
どっしり重たい雨の下にふつふつと沸き起こる情感を携えたロック。
UAもベンジーも、からりと晴れた季節よりも
じっとり湿ったこの季節に輝くそんな音の魂を共有しているように思える。
NARCOTIC GUITAR:花電車
花電車の3rdアルバム『Narcotic Guitar』は、
それまでのサイケ&ハードコア路線から新たな次元へと突入した。
架空の映画のサウンドトラックということだが、
カオスでコズミックなサウンドへと進化したそんな音楽を
能天気に聞いていていいのだろうか?
だからこれは音楽の力を借りて‘何か’を体験する音なのだろう。
なにしろNarcoticとは「麻酔効果のある」という
意味どおりの世界が展開されているからである。
Before & After Science: Brian Eno
イーノのアンビエントものなら、概ね雨に合う音楽と言えるのかもしれないが、歌物のアルバムでは、これが一番しっとり馴染むかもしれない。とりわけB面(後半)に入るとしっとりとしたイーノの情感が心にしみてくる名曲が並んでいる。
Botanical Sunset: MIROQUE
どこでどう辿りついたのか忘れてしまったけれど
雨好きの日々がさらに楽しくなる、そんなMIROQUEの音に出会えたことは幸福な出来事だ。
雨というか、水のようにクリアで、それでいて豊かな物質としての水そのものを感じさせる
この上なくキッチュなエレクトロニカサウンド。
:山本精一
チルアウトなエレクトロニカを展開するこのアルバムは
まずは身体に直に染み込んでくるまったく優しい音楽である。
雨によって無限に増幅してゆく貯水池のように
なみなみとした精神性を保ちながら
心地よさと自由さの合間を行ったり来たりする気ままな音。
未来的かつ普遍的な音の重なりがここにある。
水:SAKANA
すでに解散してしまっているユニットだけれど
そのさかなの、これまた随分と古い一枚を未だ後生大事に聞いているのは、その世界観が唯一無二だからだが、
その名も「水」というたい不思議な音楽であるが
白日の狂気を感じる初期さかなの名盤である。
Dummy :Portishead
だるく、くらく、重く、そして物悲しい。
夢も希望もなく絶望的だけどなぜか落ち着くのはなぜ?
そして、おどろくほど純粋な闇のなかでなにかがざわざわ心に触れて生きていることを確かあう。
ブリストルという土地が生み出す一連のムーブメントのなかでもとりわけ映像的な音風景画ひろがるポーティスヘッド。
「Glory box」、あのテレビノイズのようなざらざらした肌触りが心の壁にしみ入ってくる。
Shiver : Virna Lindt
クールでミステリアスなスウェーデンの美女ヴァーナ・リンド
いかにも80年代初頭を想起させる音が並んでいる。
B級スパイ映画のサントラのようでいて
小気味な渋谷系にも通じるポップさ。
弾ける水玉模様の珠玉のポップミュージックがここにある。
Time Further Out : The Dave Brubeck Quartet
モダンジャズにふさわしいミロの絵のジャケットが踊る
デイブ・ブルーベックの名盤。
歴史的名盤『Time Out』の続編ではあるけれど
変拍子がさらに強調されながらも
小気味の良いテンポで展開される。
雨の日に一人カフェに座って、
街の往来の動きを眺め入るような
そんな気分にさせてくれる。
スレレオラブのこの一枚はカラフルな水玉音楽と呼ぶにふさわしく、ポップに弾けるサイダーのような音楽ではないかと。
だから、梅雨を乗り切るために、夏に向かって希望を感じる
明朗なポップミュージックに身を浸そう。