おとなになること/GROWING UP AND OTHER VICDES サラ・ミッダアート・デザイン・写真

サラ・ミッダのこと

子供のとき「大人になること」をどこまで想像してたっけな? してたとしても、ありゃ単なる現実逃避だったかもしれない。 それがどういうことかわからずにいただけで。 サラ・ミッダのすべて手描きの絵本には、 たえずいろんなできごとに直面して とまどいながら成長してゆく子供ごころの微妙さが 実にみごとに表現されているなぁと思う。 タッチもかわいい。 神経質そうでいて、そのくせ無邪気で、 ちょっと手に負えない感じもあって そこは所詮、こどもはこどもって感じの雰囲気を うまく線のイラストに起こしている。 素敵だ。

『たなばた』君島久子 絵:初山滋 1963アート・デザイン・写真

初山滋のこと

芸術的な絵もいいだろう。 おしゃれなデザインもいいだろう。 小難しい絵も、ハッとする絵も、なんだかわからない絵も 人間が描いたものには変わりがない。 絵には言葉で説明できない情緒というものがある。 だが、そうはいっても初山滋の絵は馬鹿にはできない。 この宇宙は、その汚れなき透明な眼差しには 抗えない強い磁力がある。なぜなら、そこに描かれたイメージに 見透かされた心の穴を埋めてくれる何かがあるからだ。

はらぺこあおむし(The Very Hungry Caterpillar )アート・デザイン・写真

エリック・カール『はらぺこあおむし』のこと

そんなときに、癒されるのが、 アメリカの絵本作家であるエリック・カールの ベストセラー絵本『はらぺこあおむし』である。 ちなみに、翻訳は39か国語に渡り、出版部数は5500万部を越えるというから まさにキング・オブ・絵本である。 あおむしが蝶になるまでの過程を見事に絵本にした、 いわゆる仕掛け絵本となっている。 要するに、はらぺこあおむしが食べた部分に穴があいた作りで、 まさに視覚的で立体的な絵本なのだ。 内容はというと、日曜日に生まれたあおむしくんの食事を 土曜日まで順に1週間を追いながら、無事蝶へと変身する物語が描かれている。

dedicated-to-jon-hassell2音楽

ジョン・ハッセル追悼プレイリスト後編

歌モノとの数々のコラボーレーション作品を聴いて ハッセルのその柔軟な対応力に改めて感嘆してしまうのだが、 テクニカルな面に関しては、ある程度推察できるのだとしても。 やはり、あの唯一無二な世界観の原型は、ひたすら瞑想を誘い、 スピリチャリズムにさえ通じる音楽体験をもたらす効能がある気がしている。 それこそ、アルバムタイトルのように、 「マジックリアリズム」とでもいうべく神秘的な側面を有しているのだ。

エル・トポ 1971 アレハンドロ・ホドロフスキー映画・俳優

アレハンドロ・ホドロフスキー『エル・トポ』をめぐって

ちなみに、エルトポとは、モグラのことである。 「モグラは穴を掘って太陽を探し、 時に地上へたどり着くが、 太陽を見たとたん目は光を失う」という冒頭の詩句で始まるが モグラとは、いうなれば愚かさの象徴の意味をもつが、 エル・トポは様々な体験を通じ、 ここではその愚かさを乗り越えてゆく神そのものなのである。

ラストムービー 1971 デニス・ホッパー映画・俳優

デニス・ホッパー『ラストムービー』をめぐって

これは傑作だとか幻のムービーだとかいった 安直な言葉で片付けられない映画として記憶されるべきだ。 映画というものに、ひいては文明や資本主義社会への挑戦でもある。 その意味で、『ラストムービー』は 『イージー★ライダー』以上に重要な作品であり 以後デニスの運命を、よくもわるくも狂わせた作品として はっきり刻印しなければならない。 デニス・ホッパーにしか撮れない映画として。