ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.48 酷薄的女優論

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.48 酷薄的女優論
ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.48 酷薄的女優論

シネマで恋する女たち

長年チョコなんてもらっていないな。
負け惜しみじゃないけど、この年になってまだ欲しいとは思わないが、
もらっていやなものでもないから、あえて、そこを強調しない。
ギリだとか、習慣にまかせるのがいやなだけで、
人が人を喜ばしたい、思いを届けたいという部分は素敵なことだと思う。
毎年、2月14日は母の誕生日だったこともあり、
むしろ、こちらがなにかを施す、相手に喜んでもらう側という認識が
少なからずあったので、ちょっと捻くれた思いが出来あがったのかもしれない。
男があえて誰かにわざわざチョコをあげるのは不自然かもしれないが、
なにか、モノでなくても相手を喜ばせる気持ちは忘れたくないものである。

じゃあ、なにをあげられるのか?
そう言われると困る。
ありのままで、素直に接することぐらいしかできない。
笑顔か、それとも気の利いた言葉か、それとも、優しさか?
ちょっと綺麗事に聞こえるかもしれない。
今回は、僕の好きな女優について少し踏み込んで書いてみたい。
このバレンタインの季節、
このまだまだ身を切る寒さのなかで、勝手にほっこりとしながら
胸躍らせるような、美の化身、いや、心に灯る女優たちをとりあげて
そのなかで、胸に刺さる映画の特集でもしてみようと思う。
題して、「酷薄的女優論」。
酷薄的、というのは、マルセル・デュシャンの言葉「アンフラマンス」の和訳だが、
ちょっと、言葉で説明するのは難しい造語として、一部の人間しか知らないだろう。
わかりやすくいえば、座席の温もりのようなもので
つまり、それまで座っていた人の温もりを、
次に座る人が間接的に受け継いで感じるあの温度のようなもの、というべきか。
実体がないのに体感する、あの間接的な温もりのようなもののことだ。
そういえばわかりやすいかもしれない。

ぼくがここで取り上げる女優たちとの間には
そんな酷薄的な距離がある。
高嶺の花として、それは手こそ届かぬが、いつも心内にあり、
スクリーンを通してのみ、存在するロマンティックな思い入れである。
妄想であり、盲信かもしれないし、単なる美化なのかもしれない。
でも、それでいいのだ。
それがいいのだ。
現実には夢はない。
それこそがスクリーンならではの夢であり、
ぼくが描く酷薄的女優論そのものなのである。

ただ、女優論と書いたが、ここには論などはない。
僕個人の一方的な思いであって
それは、自分が日頃気になる人物にチョコを手渡し
告白する乙女の胸の内となんらかわらない。
いまの時代、どこまでそんな純情な女子がいるのかどうかは知らないが
少なくとも、ぼくがスクリーンで彼女たちをみるたびに
いまだにときめかずにはいられない。
そう、そんな永遠のミューズたちなのである。

加藤和彦 – 女優志願

スチュワーデスにモデル、歌手、そして女優、ときたら、かつて、女の子なら誰もが憧れる職業というのが定番だった。最近じゃYOUTUBERなんてものもあるにはあるが、それはひとまずおいて、いまでも花形職種に変わりはないだろう。なれるものなら誰だってなりたい、そう思うにちがいない。だが、世の中そんな甘くはない。女優と一口でいっても、アマチュアだって、舞台に立てば立派な女優だ。もっといえば、成長の早い女子は、天性の女優なのかもしれない。が、たとえ、女優と呼ばれる花形職業についたとて、作品に恵まれなければ、世にいう大女優への道は開けるはずもない。もっとも、世間で認知される大女優とやらが、すべて気を惹くわけでもない。そこは、いい作品に出て、もてる才能をうまく発揮したものだけにスポットライトが浴びる。少なくとも、ぼくはそんな思いで女優たちを見つめている。だから、女優が輝くには、やはり、いい作品との出会い、つまりそれを引き出す監督がいてこそだと思う。その点、ぼくが大好きな女優たちは、みなそうした恩恵のもとに、眩しいまでの輝きを放っている、まさに花たちは立派な園芸あって育つのである。ぼくはそんな麗しい花弁に誘われるミツバチにすぎない。女優とはまさに、この世の幻であり、儚い夢物語の主人公たちである。私生活はさておき、スクリーンの夢は永遠の時を刻む。なんと甘美なことだろう。

ちなみに、この「女優志願」は加藤和彦の名盤『あの頃、マリーローランサン』に収録されたナンバーだが、キッド・クレオール&ザ・ココナッツの「Darrio」という曲のイントロがが引用され、軽快で洒脱なラテンポップナンバーだ。ジャケットに金子國義、そしてマリー・ローランサンがタイトルに出てくる、まさに加藤和彦&安井かずみが残したとりわけ究極のエレガントな都会のムードが漂っており、これぞ、日本が誇るシティポップの名盤と呼んでいいアルバムだ。

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