秋も深まりし今日この頃。
いよいよ冬の扉があちこちに散見する季節。
よく働いたアリたちには、
ホッと一息つく至福の時間かもしれないが
反対に遊び疲れたキリギリスにとっては、
来るべき冬に焦燥感とともに
なんとなく気ぜわしいような、
そんな慌ただしい季節のはじまりなのかもしれない。
人生でいうと、最終章への始まりというべき
そんな冬の到来を、祝福と受け取るべきか、
絶望と捉えるか、では
随分と気分も違ってくるはずだ。
ひとまず、
こたつやストーブの準備をしながら
のんびり、ほっこりと
気分をあたためて、
きたるべき冬将軍の到来に備えるといたしましょう。
我が家の秋から冬への定番セレクション 其の壱
●扉の冬:吉田美奈子
日本のローラ・ニーロ、なんて言われ方もするけどこれはこれ。
このころのJPOPシーンの歌姫たちは実に個性があった。
吉田美奈子という実力シンガーソングライターの
個性、オリジナリティ溢れた名盤だ。
ユーミンと比べると、幾分地味な存在だけれども
どちらかといえば玄人受けするのはこちらだろうな。
キャラメルママをバックに従えての、記念すべきファーストアルバム。
チャック・ベイリーを彷彿とさせる細野さんのベースが、
これでもかってぐらいに堪能できる意味でとても貴重な一枚でもあるな。
● ブルース:阿部芙蓉美
冬の光のような透明でクールな声が孤高に響く。
どうやってはまったしまったのかさえ思い出せないのだが
いつの間にか、このシンガーソングライターの歌が
ヘビーローテションになってしまっている。
冬への旅にはお供を願いたい、そんな楽曲が多い気がする。
一本筋の通った、強さの中にある静かな情熱が胸に響いて来る。
ぜひ一人旅の際には列車の窓から見る風景の背後に
阿部芙蓉美の歌を流そう。
● Blue:Joni Mitchell
一時は安否を気遣われたジョニだけど、もう十分すぎるほど
音楽史にその才能の爪痕を残してきた人だ。
そんな彼女のアルバムの中で、一枚を選べと言われると
色々あって迷うけれどやっぱりこれかな。
ダイナ・クラールやプリンスがカバーした「A Case of You」や
カナダへの望郷の念が込められた名曲「River」など
シンプルながらに心に沁みる名曲ぞろいの名盤。
僕の大好きな色ブルー。そう『BLUE』だ。
●The Heart of Saturday Night:Tom Waits
ひと肌恋しい季節になると、決まって
ぼくはトム・ウェイツの音楽をひっぱりだして聴いている。
土曜日の夜、ひとりさみしく切ない時間に
トムの哀愁が人生を教えてくれる。
高い酒だけがすべてじゃない。
オシャレなバーだけがすべてじゃない。
いい女だけがすべてじゃない。
ほんものの男になりたきゃ、このアルバムは必須だ。
●Black Coffee:Al Kooper
なんと29年ぶりというアル・クーパーのアルバム。
しかもバークリーの教員仲間と組んだ新しいバンドの演奏だ。
タイトル通り、苦味ある歌の余韻が哀愁を誘う。
かつてボブ・ディランの「ライク・ア・ローリング・ストーン」で
披露したオルガンプレイは健在。
いぶし銀のサザン・ロックテイストを味わいましょう。
ちなみに、僕はどうもブラックコーヒーが飲めない。
苦手なのだ。人生の苦味を家で噛みしめることはない。
いや、それがまた渋くていいんだよ、ベイビー、そんな会話が聞こえてくる。
●Cure Jazz: UA X 菊地成孔
ポップミュージックを歌うUAが好きだけれど
ちゃんとジャズも歌える技量の確かさに
改めて凄いシンガーだと思った一枚。
そして女性ボーカルをきちんとエスコートする菊地成孔ほど
ゴージャスな日本の作曲家も知らない。
天才と天才の晴れやかな邂逅が日本のジャズの未来を予言した傑作。
「CURE JAZZ」ってタイトルが絶妙だな。
●Painted from Memory:Elvis Costello with Burt Bacharach
コステロさん、とうとうバート・バカラックとですか・・・。
当時、そう思ったものだ。
バカラックを愛してやまないコステロの願望叶ったコラボアルバム。
いやあ素晴らしいっすよ、こりゃあ。
湯気のあがる飲み物と一緒にしみじみと・・・
っていうのがわたくしなりの聴き方ですね。
たくさんあるコステロのアルバムのなかで
これが一番好き、なんていったら、コアなファンにしかられるかな。
でも、これには参りました。
バカラックのアレンジも冴えておりますね。
有無をいわさぬ良質のポップミュージックの見本。
●Private Eyes:Daryl Hall & John Oates
ブルー・アイド・ソウルの二人組といえば
このひとたち、ホール&オーツですね。
通算11作目の本作はセルフプロデュースで
「Private Eyes」「I Can’t Go For That(No Can Do)」の2曲を
全米チャート1位に送り込んだ、
まさに80年代のサウンドの代名詞といえるかもしれない名盤。
おもにこの二曲しか普段は聴かないのだけれど、
ひさしぶりにアルバムを通して聴くと
ポップでキャッチーなメロディ楽曲が並び、
大衆受けした理由もわかる。
ダリル・ホールの才能が一気に開花した黄金期のアルバムといえる。
●Slope:Steve Jansen
ドラマーとしての確かな腕はさることながら
コンポーザーとしての才能を地道に広げてきたスティーブ・ジャンセンの
ファーストソロアルバム。
ドルフィンブラザーズ等で披露した兄譲りのボーカルは封印し
その兄シルヴィアンをはじめとするゲストボーカリストたちを招集しての
実に玄人好みのエレクトロニカ仕様を提示している。
●HOSONO HOUSE:細野晴臣
仙人は疲れ知らず・・・
今年は五十周年細野イヤーに湧いた一年だったなあ。
セルフカバー、デジタルな『HOCHONO HOUSE』もいいけれど
やっぱり、原点はこれかなって思う、
細野さんのすごいところは、
何をやろうと、いくら新しいことをやっても
全くぶれず、何も変わらないってことだと思うな。
このアルバムこそ、
昨今台頭するジャパニーズシンガソングライターたちのバイブルであり原点だと思う。
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