萩原健一

誘拐報道 1982 伊藤俊也映画・俳優

伊藤俊也『誘拐報道』をめぐって 

この作品、キャスティングが素晴らしいのだ。 まず、ショーケンと小柳ルミ子この組み合わせがフレッシュに活きたと思う。 いずれも伊藤たっての希望だったという。 ショーケンは、この映画のために10キロも減量して臨み、 まるでドイツ表現主義的な形相で、鬼気迫る誘拐犯を熱演すれば、 小柳ルミ子はここで映画初出演とはいえ、 大胆な汚れ役を厭わず、それまでのイメージを覆すが如く 誘拐犯の妻を、文字通り身を投げうつような覚悟で演じ切った。 以後、彼女のキャリアを前に大きな爪痕を残したといっていい

前略おふくろ様サブカルチャー

『前略おふくろ様』をめぐって

人と人を結んでいる不確かなものを 確かにしていくというのが このドラマの実態だとするならば、 その正体こそが紛れもなくそこにあるのだと 実感するからであり、 『前略おふくろ様』は、 時代と俳優とスタッフによって生み出された 今絶滅危惧種のようなドラマであることはまちがいなく、 その昔、こんないいドラマがあったことを 僕は嬉しく思うし、 自分にも、また自分のおふくろさんにも 輝くような青春があったということを 今一度思い返すのであります。

ろぐでなし VOL.5映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL5.

少なくとも、好きになった映画の、 そのたまらない空間の中に俳優に恋をする、まさにそんな感覚に過ぎない。 言うなれば、その映画が傑作であれ、駄作であれ、 俳優だけで観れてしまう映画というものもまままある。 その俳優が写っているだけで、何かを話したり、何か気になる仕草をしたりすることで 我々観客の心を奪ってしまうほどの存在。 ここでは、そうした比較に基づいて書き始めようなどという大それた考えは一切ない。 ただその映画が好きだという理由を あえて俳優目線に落とし込んで考えてみたい、それだけのことなのだ。