東京国立近代美術館「大竹伸朗展」のあとに
16年ぶりという東京国立近代美術館での「大竹伸朗展」では、 視覚にさえも重力が加わるのを改めて知った。 巨大なキャンバスはもちろん、 日常の漂流物をスクラップブックに詰め込み、 さびれた小屋をまるごとセット化し、 その究極が「ダブ平」という音響装置としての舞台を構築する。 大竹伸朗という巨人の、まさに、これら膨大で圧倒的な作品群への印象を、 あえて、陳腐な言葉や耳慣れない表現で置き換えてゆくことには、 こちらも深く注意を抗いながら、 全てを一瞬にして無に記される瞬間瞬間に出会ってしまった現実の前に 立ち尽くす。 だが、不思議にもそれゆえに、魂が浄化されてゆく快楽に溺れてしまうのだ。 これが芸術の快楽と呼ぶか、呼ばないかは自由である。