増村保造『曽根崎心中』をめぐって
そんな増村の最高傑作は、はて、何だろう? ふとそんなことを考えてみたが、優劣をつけるには思い入れが邪魔をする。 よって最高傑作うんぬんはこの際どうでもよい。 ここではまず、紛れもない傑作 近松の名作の映画化「曾根崎心中」を取り上げてみたい。
そんな増村の最高傑作は、はて、何だろう? ふとそんなことを考えてみたが、優劣をつけるには思い入れが邪魔をする。 よって最高傑作うんぬんはこの際どうでもよい。 ここではまず、紛れもない傑作 近松の名作の映画化「曾根崎心中」を取り上げてみたい。
そんな渥美マリだが、とりわけ増村保造による二本、 『しびれくらげ』『でんきくらげ』は、映画として 悪くはない作品として輝きを保っている。 渥美マリを主演として、堂々とパンチの効いた作品を残しているのは、 紛れもなく、増村によるところの力が大きい。 間違っても、単なるお色気映画ではないし、 男に食い物にされるだけのかよわい女像には程遠く、 他の増村作品同様の強い女を演じている。
それにしても、安田道代があられもなく、 被写体となってさらしたヌードのカットが、スタイリッシュに並べられ、 あたかもグラビアの一枚を飾ってしかるべきものが、 スクリーンを占拠するモダンさで、かくも大胆に痴情の小道具として晒されると、 小説の醸し出すエロティシズムは、逆にどこか薄らいでしまって、 女のしたたかさ、男の哀れみだけを扇情的に浮かび上がってくるのである。
この作品は増村VS若尾ラインの中でも 最もその傾向が顕著な内容が描き出されている。 愛に生きる女が、ついには男にまで強要してまでも 意思を貫き、周りをも顧みない激しい生き様を晒す作品である。 テーマは終始ブレることはないのだ。
この勝新&田村高廣の天下の名コンビ、 大宮貴三郎と有田上等兵が繰り広げる 戦地でのドタバタコメディーは実に痛快極まりない活劇天国。 なんだか胸がすっとするだけでなく、大いに笑えますし、 ハラハラドキドキ、興奮いたしやした。 いやあ、至福の戦争映画、というと誤解されるところだが、 そういう縛りを抜きで見るべき映画なんだと思います。
なんといっても二十作品をも数える 増村作品での彼女の強度を持った眼差しの数々が、 とりもなおさず観たいのだ。 それら増村作品における若尾文子演じる代表的な「女」たち、 なかでも『妻を告白する』『夫はみた』『清作の妻』『刺青』『赤い天使』における、 彼女の生きざまには、ちょっと凄いまでの感動がある。 いやほんとうに、物凄く、凄い。