三船敏郎

赤ひげ 1965 黒澤明映画・俳優

黒澤明『赤ひげ 』をめぐって

黒澤作品のなかでも、人気、評価の高い1本である『赤ひげ』は この年(1965年)の日本映画の興行収入ランキングで堂々第1位を記録している。 モノクロ作品にもかかわらず、髭を赤く染めてまで挑んだという 世界のミフネ演ずる赤ひげ先生を筆頭に、 藤原釜足、志村喬、左卜全、土屋嘉男、山崎努など 馴染みの黒澤組俳優たちがしっかり脇を固め、 そこへ若き医師役に若大将こと加山雄三を中心に その両親には、ちょっとした顔出し程度とはいえ 田中絹代に笠智衆まで贅沢にあてがわれている。 大根で頭を殴られるほどの強欲非道な淫売屋女将に杉村春子、 小津や溝口作品では見ることにない体当たりの狂女に香川京子など、 黒澤作品には珍しく、色とりどりの女たちによる映画でもある。

羅生門 1950 黒澤明文学・作家・本

黒澤明『羅生門』をめぐって

人間が抱え込んだ闇の深淵を解明しようとしても不毛だ。 そんな芥川の別の短編『藪の中』をモティーフにした世界を、 世界のクロサワが映画化した名作『羅生門』は やはり見応えがある力を持った映画である。 まずはセットの素晴らしさだけでゲイジュツ品。 そして、宮川一夫によるカメラワークの巧みさだけで一級品。 光の美しさの見事な造詣にうっとりさせられる。

ろぐでなし VOL.5映画・俳優

ロピュマガジン【ろぐでなし】VOL5.

少なくとも、好きになった映画の、 そのたまらない空間の中に俳優に恋をする、まさにそんな感覚に過ぎない。 言うなれば、その映画が傑作であれ、駄作であれ、 俳優だけで観れてしまう映画というものもまままある。 その俳優が写っているだけで、何かを話したり、何か気になる仕草をしたりすることで 我々観客の心を奪ってしまうほどの存在。 ここでは、そうした比較に基づいて書き始めようなどという大それた考えは一切ない。 ただその映画が好きだという理由を あえて俳優目線に落とし込んで考えてみたい、それだけのことなのだ。