ヴィム・ヴェンダース『都会のアリス』をめぐって
当時、小津安二郎を心の師と考えていたヴェンダースにとっては まさにフィリップ・ヴィンターとアリスの関係は 限定的ではあるが運命共同体、 つまりは擬似家族として、旅を通して絆を深めてゆくことになる。
当時、小津安二郎を心の師と考えていたヴェンダースにとっては まさにフィリップ・ヴィンターとアリスの関係は 限定的ではあるが運命共同体、 つまりは擬似家族として、旅を通して絆を深めてゆくことになる。
ただ、かつて、我々日本人には、世界に誇れる映画作家がいた。 小津安二郎が描いた東京、ならびに美しい成果様式を持った 日本人の眼差しの意味を、この遠い異国の人間に教えられるのだ。 それはある意味、正しい自国への認識へのヒントであり、 貴重な眼差しなのである。
それにしても、今は映画の重要なタームの一つにさえなってしまった 「ロードムービー」という言葉を、もっとも強く意識した映画が 思い返せば、この『パリ,テキサス』からだったような気がしている。 それはたんに地図上の、どこそこからどこそこへ といった空間移動のみならず、 魂の移動,彷徨という意味をふくんでいたのは間違いない。