アニエス・ヴァルダ

「落穂拾い」2000 アニエス・ヴァルダ映画・俳優

アニエス・ヴァルダ『落穂拾い』をめぐって

ヴァルダの『落穂拾い』は、19世紀の絵画の静けさを、 21世紀のドキュメンタリーという運動に置き換えた作品である。 彼女はデジタルカメラを手に、農村から都市へ 軽さを纏ってフランス各地を旅することになる。 畑で拾われぬまま腐っていく山積みのジャガイモ、 あるいは、市場に捨てられた野菜や果物、 都市の廃棄物の山を掘り返す人々に、カメラは寄り添う事になる。 ヴァルダはその現実を、糾弾ではなく、淡々と、しかし深く見つめる。 それは捨てられたものを通し、真理を探すことなのだ。

ろぐでなし VOL.44特集

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.44 秋を嗅ぐ

やはり、秋はいい。いいのだ、秋。 そんなことを静かに噛み締めながらも、 やはり、モノには道理、そして移ろいがあり、 それを感じることは幸せなことであり、 それを感じ取れる日本という国が年々愛おしくなっている。 幸い、ようやく、不穏な空気、気配が開けそうな世の夜明けを横目に 希望のわく、そんな思いと、少し憂いを滲ませるという相反する 複雑な思いもかくさずに、サウダージな詩的なひとときを 言葉に託したいと思う。

顔たち、ところどころ ©Agnès Varda-JR-Ciné-Tamaris, Social Animals 2016映画・俳優

アニエス・ヴァルダ『顔たち、ところどころ』をめぐって

それにしても、なんてステキな映画だろう。 人生の素晴らしさが、 宝石のように至るところにちりばめられている。 ものすごくホンワカもするけど、 要所要所ヒネリも効いているし、かと言って、 全然こ難しい映画というわでもない。 それでもって全然大作然としていなくて 完璧過ぎるわけでもないから自然に入ってゆける。

Sans toit ni loi 1985 Agnes Varda映画・俳優

アニエス・ヴァルダ『冬の旅』をめぐって

アニエス・ヴァルダの『冬の旅』 (原題は「屋根もなく、法もなく」で、 最初の邦題も、いつしか『さすらう女』へと変更されている。) そうした現実を決して美化することなく ひどく厳しい現実をさらけ出す。 旅とさすらいを同じ目線で語って良いものか? そうした矛盾が暴きだされはするが、その主張はあまりに無情である。 18歳の少女が、そのさすらいの果てに命尽きる映画である。 女路上生活者として生きた数日間、 出会うさまざまな人間を通し回想しながら 彼女の人間像に触れようとする。