秋とともに、ミュージック実行委員会  MORNING編

MORNING COFFEE
MORNING COFFEE

微笑み差しの窓辺に

味覚の秋、芸術の秋、そして音楽の秋。
企画の番外編として、ここにミュージック実行委員会を発足します!

てなことで、秋という季節に聴きたい僕好みの音楽を選曲するに当たって、
それぞれ、時間帶別に取り上げてみようと思う。
まずは、目覚めて、コーヒーを淹れて、そして音楽をかける。
この流れに見合う十曲をというコンセプトで。
朝という一日のはじまりを共にする音楽といいかえてもいい。
会社勤めの、時間に追われているような人には、
ちょっと合わないかも知れない。
いや、だからこそ、合うのかも知れない。
けれど、そんなことはどうでもよくって、
まずは、自分のなかにリズムをせットすることだ。
そのリズムに忠実であることだ。
そのリズムで一日、一日を大切に過ごしてゆく。
そういった想いを込めて選ぶ10曲。
考えてみれば、ぼくはずっとこのリズムが変わってない
ってことなんだな。
良い意味でも、悪い意味でも。

音と共に、一日が始まる10曲 「微笑み差しの窓辺」

Starfish and Coffee · Prince

オハヨーゴザイマス。目覚ましとともに目をこすると、奇想天外な朝食が運ばれたりして、ははは。なんとカップを覗くとコーヒーに浸かったヒトデはいかが? それは、コクトーの映画のように、まるで逆回転のリズムで、甘美な夢に戻ろうとする副作用かもしれない。が、そこは現実のあいだで湯気が立ち上る瞬間を忘れないでほしい。ぼくの朝にも小さな秘密がたくさん詰まっている。瞬きをしながら、淹れるコーヒーが、この世界をゆるめる、今日も素敵な1日でありますようにそんな思いで1日が始まるのだ。今日という日が、すこしだけ愉快な予感をかきたてる瞬間には、プリンスの「Starfish and Coffee」を。

Good Times – Phoebe Snow

陽光がカーテンを透かしている。世界がさらに明るくみえるように、それを一気に解放しよう!そう、聞こえてくるフィービの声はまるで、光のつづら折りのよう。本来、幸福とは、決して大声ではなく、静かにうなずく程度のものがちょうどいい。ぼくは、朝の静寂に耳をすます。そこに、これはサム・クックのカバー「Good Times」でもって、心に日差しを取り込もうか。

Cutting Branches For A Temporary Shelter · Penguin Cafe Orchestra

キラキラした音が、透明な結晶になって部屋を満たすミニマリズム。デザインされた机の影、カップの丸み、光の粒がリズムを刻むかのように、周辺に転がっている。何も語らず、ただ存在する音と空気とが溢れ出してゆくような朝は、空気のなかにミニチュア王国を構築中。そこに、新鮮な輝きと、穏やかな心が育まれる音楽が流れているよ。永遠の癒し系、ペンギンカフェオーケストラでくつろぐひととき。きょうもワクワクのさざなみが聞こえてくる。

A Brand New Day · Mari Nakamura

ギターの木目に、光がしみこむ。それは森の記憶。草原の輝き。そして、壁に立てかけたギターを手にとるように、指が時間を弾きながら、吸い込む朝の空気。まるで絵本のようにめくるような朝。その伸びやかな歌声に導かれて新しい一日が始まる。たとえ、昨日の悲しみがまだ指先に残っていても、この声があれば、また今日という日を信じてみようと思える。中村まりの歌には、そんな力を呼び込む魅力があふれている。

Salif Keita – Tassi

祈りのような声が、時間を止めることがある。だれだ、嘆きに絶望する人は? 言葉なんてもういらない。信じよう。なにかが道を照らし出す瞬間を。音楽が心臓の鼓動をやさしく模倣するかのように、時を刻む。ぼくは静かに呼吸しながら、世界が再び動き出すのを待つ。そう、サリフ・ケイタのギターに、すこしばかり、潤いを帯びた大地の歌声がシルキーな蜘蛛の巣のような心を編み上げる、そんな心に花束を。

Hermeto Pascoal – Hermeto 

時空を超えて、サウダージが跳ねる。音楽の力を借りて、時空を越えるのだ。楽器も鳥も、風の粒も、すべてが同じリズムで呼吸する。その波動をとらえることの素晴らしさ。この風のように流れるエレピの躍動を聴くがいい。そして眩い絹で覆われたかのようなハーモニーに傅けばよい。音楽はかくも自由で静かで、そして何より軽やかだ。僕の知らない異国の朝が、どこからともなく聞こえてくる。ヘルメートって人はなにも奇人でも変人でもない。音楽の神なのだ。ブラジルという土地から、音楽の神がここに降臨する瞬間を見届けよう。

The sheik of araby · Pascal Comelade

子供たちの声が、遊びのリズムが、どこかで跳ねているかのように聞こえてくる。トイピアノが、それに応えるようにガヤガヤといたずらに笑っている。あわただしい朝には、もう一度、無邪気に世界をやり直すために、心を整えるために童心を取り戻そう。パスカルの音楽は優しくそう語りかけてくる。そう、音楽とは、光と感情と魂が戯れるためのおもちゃ箱だったのだ。

The Girl from Ipanema · naomi & goro · 菊地成孔

都会の風がギターの弦を行き来する。そんなボサノヴァのリズムは、通りを歩く誰かの歩幅に似ているように、とても身近だ。ボッサの名曲が放たれる都会の優雅さよ。そんな音楽に身を委ねだけで、もう一度、街に繰り出したくもなる。そしてとびきり素敵なものに出会うことだけを夢想する。聡明なナオミ&ゴローの軽やかさに、ビルを颯爽とすり抜けるような菊地成孔のサックスの風が響きわたる。

Hazey Jane II · Nick Drake

そのストロークだけで、淡い色彩の風が部屋へと入り込むことになる。そのままぼくの心を押し出して、外の光のなかへと駆け出したくなってくる。背中合わせ、少しばかりの憂いと、確かな希望。それでもニックのギターの疾走が、リズムにのって世界の輪郭をやわらかく撫でていく。長身のその視線から見下ろすこの世界の美しさ、広さったら。想像しただけで眩暈がしてくる。

Meteor Rain -Leonids On The morning Of November 17th 

流星がひとすじ、午前の空を横切る。あなたは見ただろうか?聞いただろうか? 日本にもサウダージは、ある。哀しみは、もはや重荷ではなく光のかけらなのだ。このサウダージが静かに息をして、午後を迎える準備をする。音は、終わりではなく、新しい沈黙のはじまりを運んでくるのだ。とびきり、粋でダンディーな男の佇まいで。幸宏の声は時代を超えてぼくらを優しく包み込んでくれる。さあ、オシャレをして街に出かけよう。

SONG LIST

  1. Prince – Starfish & Coffee
  2. Phoebe Snow – Good Times
  3. Penguin Cafe Orchestra – Cutting Branches For A Temporary Shelter
  4. Naomi & goro + 菊地成孔 – The Girl from Ipanema
  5. Hermeto Pascoal – Hermeto
  6. 中村まり – A Brand New Day
  7. Salif Keita – Tassi
  8. Pascal Comelade – The Sheik of Araby
  9. Nick Drake – Hazey Jane II
  10. 高橋幸宏 – Meteor Rain – Leonids On The Morning Of November 17th