小沢昭一

『痴人の愛』増村保造 1967文学・作家・本

増村保造『痴人の愛』をめぐって

それにしても、安田道代があられもなく、 被写体となってさらしたヌードのカットが、スタイリッシュに並べられ、 あたかもグラビアの一枚を飾ってしかるべきものが、 スクリーンを占拠するモダンさで、かくも大胆に痴情の小道具として晒されると、 小説の醸し出すエロティシズムは、逆にどこか薄らいでしまって、 女のしたたかさ、男の哀れみだけを扇情的に浮かび上がってくるのである。

『「エロ事師たち」より 人類学入門 』1966 今村昌平文学・作家・本

今村昌平『エロ事師たちより 人類学入門』をめぐって

ちなみに主人公スブやんとは酢豚の略で、 原作では「豚のように肥ってはいても、 どこやらははかなく悲しげな風情に由来するあだ名であった」 と記されているから、とすれば、小沢昭一ではなく、 当時なら、フランキー堺あたりが適任だったのでは、とは思うけれど、 このすすけたような小沢昭一の哀愁は、どことなくはかなくも十分に熱演であった。 ちょっとした性的倒錯を抱えた喜劇的中年エロ男を演じさせると、 この俳優は天下一品であると思う。