ダニエル・シュミット『デ・ジャ・ヴュ』をめぐって
かつて見た夢の残響、それがデジャヴュの正体だとしたら、 どこで、いつ、その光景を見たのかが思い出せない。 ダニエル・シュミットが1990年に発表した幻想的な映画 『デ・ジャ・ヴュ(原題:JENATSCH』からは、 まるで記憶の深層に落ちていった過去の反響のように、 観る者の時間感覚を溶かし、困惑させると同時に 目を閉じてなお匂い立つ気配だけを漂わせている。 その驚きから、人は、ルネ・マグリットの絵画の風景にでもトリップしたかのような、 日常からの逸脱を体験するにちがいないのだ。