阪本順治

顔 2000 阪本順治映画・俳優

阪本順治『顔』をめぐって

『顔』は、そんな正子がいつしか愛おしくなってくる映画である。 彼女の生き様に突き動かされるであろう人間たちは、 いみじくも、彼女の逃亡生活がはじまったところで 神戸の震災に見舞われた人々のような、 すべてを失い、生きる希望を見いだせない人々ばかりだ。 生きてさえいればなんとかなる。 そう、なんとかなるという、何の根拠もない自信こそが 救いになるのだと言わんばかりである。 ラストでのひとり浮き輪をしながら海を泳ぎきろうとする正子のロングショット。 そこからもがきながら必死に前へと進もうとする彼女のアップで話は終わる。 当然、彼女の人生は終わらない、続くのだ。 『顔』は福田和子の件とはちがい、フィクションであるがゆえに われわれに真の生きる勇気を与え続けてくれるだろう。

阪本順治「団地」映画・俳優

阪本順治「団地」をめぐって

オフビートな調子で進むなか、 最後、SFチックな妙味が少し乗っかった哀愁のあるコメディ。 喜劇、とりわけ日本映画で、ちょうどいい具合の すんなり入り込めるコメディなんてのはなかなか出会えなかった。 阪本順治による完全オリジナル作品『団地』は キャスティングの妙も手伝って、 日本にもそういう系譜がちゃんと存在することが何より嬉しかった。 やはり、阪本順治はコメディには貴重な存在だ。

特集

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.32 オフビート大好き人に贈る“ツボ”にはまる映画特集

オフビートってものを考えると、ついつい饒舌になり勝ちで それでいて、なんか小難しく考えて悦に入るようなところもあるが 総じて、曖昧かつ懐の深いものであるという魅力を感じている。 その辺りの考察を含めて、あくまで個人的な感想の域を出ないが、 ここでは、オフビートは言葉の遊びのようなものとして捉えて欲しい。 あたかも、音楽を聴くようにしてオフビートを楽しんでみよう、そういうことだ。 オフビート万歳。