探偵物語 1979音楽

玉石混交充実の秘境の旅、アウラな70’sグラフィティ(後編)

少なくとも、僕が知見してきたモノに関しては そうした流れのなかに産み落とされた、ものばかりだ。 それが時代と共に希薄になって、 コマーシャル主義、インスタントで中身が薄っぺらいモノにかわって今日に至っている気がしている。 もちろん、それは僕個人の感想だが、 それを結論として、昔は良かった、などというつもりはない。 が、そうしたものをリアルタイムで、体感できたことは 幸福な出来事であったと思う。

beatles 来日 1966音楽

イケイケ時代の赤裸々ラララな60’s グラフィティ

しかし、どうころんでも、万人が納得し共感を得るような そんな60’sを回想できそうもない。 といって、単にマイナーで、へんてこなものばかりを振りかざす気にもなれない。 あくまで、心に響く後付けの60’s というくくりでしかない。 はたして、当時、このエリアに熱狂していた人がいるのだろうか、 いたとしたら、きっと仲良くなれたかどうかさておき 今より遙かにレアで、特殊な人種だったのはまちがいないだろう。

野坂昭如 1930−2015サブカルチャー

野坂昭如のこと

この『東京小説』は、現在から未来へかけての トウキョウの有り様、行く末を暗示している。 いわば、とてつもなく大きなテーマでありながら、 いつになく、野坂節はクールに、どこか達観したかのように 軽やかに決めてくれる14の短編小説からなっている。 野坂文学、その文体は麻薬のように読み手を酔わせるのだが、 その世界に踏み込んでいけばいくほど、 この作家の懐の深さを発見する。 そう、僕にってはNOSAKAとはたえず発見の作家でもある。

山口小夜子 1949 - 2007サブカルチャー

山口小夜子のこと

文化人類学者山口昌男によれば、 「ルル」というのは舞台芸術のジャンルで人気を博し、 女の道化師として、日常のモラルに抗った、 いわばアナーキないち体現者のことだという。 岸田理生原作、演出佐藤信の舞台『忘れな草』で いみじくもルルを演じた山口小夜子の根底には そうしたアナーキズムが脈々と受け継がれていたのだろう。

サブカルチャー

『寺内貫太郎一家』のこと

『寺内貫太郎一家』の主人である石屋の貫太郎は いわゆる頑固おやじそのもので、 課長としていつも威張っていて、全くもって独裁的である。 おそらく設定は昭和一桁の世代だろう。 時に暴言、暴力は当たり前だ。 だが、そレゆえに本質的な優しさや愛情が よりダイレクトに伝わってくるのである。 無論、ドラマとしての誇張はあるものの、 昭和を生きてきた人間には、多少なりとも馴染みがあり、 決して他人事には思えない家族の風景なのである。

渋澤龍彦 1927-1987文学・作家・本

渋澤龍彦のこと

かくして、僕が異端文学をはじめとするフランス文学の洗練を浴びたのは この渋澤龍彦の影響抜きには語れないことを自覚するのである。 何年経っても、その全貌は計り知れないが、 氏の博識な宇宙の前に佇むと、 年甲斐もなく、単なる異端文学愛好家としての蒼白い焔が高ぶってくる。 一時期、澁澤関連の本ばかりを積み上げ 片っ端から夢中になって読み耽っていたものだ。 もっとも、あれは主に十代の頃の頭でっかちなころの話で、 肝心の中身は随分と抜け落ちてしまっている。