映画・俳優

映画・俳優

バーバラ・ローデン『ワンダ』をめぐって 

ボタ山を歩く、米粒のように小さな一人の女をロングで捉えたショット。 彼女は数少ないであろう知り合いに金の工面をしようと向かうのだ。 よくみれば、頭にカーラーをつけたままである。 彼女は一応子持ちの主婦のようだが 家事をやらない、子育てもしない、飲んだくれている。 何かにつけ、覇気がない、いってみればオツムもちょっと弱いような女でさえある。 昔なら、こういうタイプの男は結構いた気がするが、 女というだけで、下げずまれる社会と時代背景のなかで 彼女は社会の周辺で、かろうじて生きている。 そんな女をヒロインにすえた一本の映画が『WANDA』である。

イディオッツ 1998 ラース・フォン・トリアー映画・俳優

ラース・フォン・トリアー『イディオッツ』をめぐって

それにしても、ラース・フォン・トリアーは改めてすごい監督だと思う。 この『イディオッツ』が創作のドキュメントであることはわかっているが ドグマ95の精神に基づく、ドキュメンタリータッチの撮影法によって抉り出される 物事の本質を、時に不快なまでに生々しく、妥協なく暴きたてられるのだ。

トリコロール/白の愛 1994 クシシュトフ・キェシロフスキ映画・俳優

クシシュトフ・キェシロフスキ『トリコロール/白の愛』をめぐって

トリコロールとは、フランスの国旗の色で それぞれに、「自由(青)・平等(白)・博愛(赤)」を意味する、 ということは念頭に置いておく必要がある。 さて、その白が「平等」を意味するのはいいとして、 問題は、平等の意味をどう受け止めるか、である。 まずは、主人公の男と元妻の関係性。 つまりは、恋愛や結婚、愛に平等はあるのだろうか? ということであり 愛と言っても、祖国への愛もあれば そこには兄弟愛さえも含まれるのかもしれない。

鈴木清順「夢二」1991映画・俳優

鈴木清順『夢二』をめぐって

大正ロマン三部作、最後を飾るこの『夢二』は 清順愛好家からも、全2作からすると、 少し物足りないという声も聞こえてくるが これはこれ、清順節は相変わらず色濃く反映されている。 その絢爛豪華な美術にはうっとりするばかりだ。 女性陣の着物姿はもとより、装飾へのこだわりは随所にみられる。 なかでも、柱から手を離すと夢二の絵が現れるモンタージュや 廃墟での傾きベットでのいびつな情事、 黄色いボートがいきなり立ったり、それこそ十八番の色とりどりの襖だったり、 夢二の分身に絵を描かせたりと、妖しさ満載のトリックは健在である。

Om det oändliga 2019 ROY ANDERSONアート・デザイン・写真

ロイ・アンダーソン「ホモ・サピエンスの涙」をめぐって

ざっと話を33話分を一応言葉で追ったものの それで面白さが伝わるとは到底思えないところである。 さらに丁寧に情景を描写できなくもないが、 そこは映像を見てそれぞれが感じ取ればいい。 そこは主観が入るので簡易的に並べてみたにすぎない。 もっとも、映像でそれをみたとて退屈を感じる人もいるだろうし これがなに? 何が言いたいの? と思う見方もあるだろう。 ロイ・アンダーソンのスタイルは、 概ね「散歩する惑星」からほとんど何も変わってはいない。 映画としてはかなり特殊な形態であり、 斬新でありながらも、見る人を選ぶ映画でもあるんだと思う。

飛行士の妻映画・俳優

エリック・ロメール「飛行士の妻」をめぐって

ロメール映画に出てくる男女関係は たいがいいつもどこかギクシャクしていて そのすれ違いの様を面白く映画にしてしまうのが骨子ではあるが、 この「飛行士の妻」においては、 本命男との不倫が暗礁に乗り上げ 不安定な気持ちを抱えた25歳のOLの 気ままぶりに翻弄される男の滑稽さの根本は つまり「考えすぎ」であり 「思い込み」が元で空回りする、 といった事情がみごとに描き出されている。

阪本順治「団地」映画・俳優

阪本順治「団地」をめぐって

オフビートな調子で進むなか、 最後、SFチックな妙味が少し乗っかった哀愁のあるコメディ。 喜劇、とりわけ日本映画で、ちょうどいい具合の すんなり入り込めるコメディなんてのはなかなか出会えなかった。 阪本順治による完全オリジナル作品『団地』は キャスティングの妙も手伝って、 日本にもそういう系譜がちゃんと存在することが何より嬉しかった。 やはり、阪本順治はコメディには貴重な存在だ。

ゲオルギー・ダネリア「不思議惑星キンザザ」映画・俳優

ゲオルギー・ダネリア「不思議惑星キンザザ」をめぐって

カルトと言っても、おどろおどろしかったり 際物的な表現で誇張されているわけではない。 それゆえに「不思議惑星キン・ザ・ザ」において 「クー」に代表される、実にとぼけていながらも、 不思議な魅力に満ちた雰囲気が 日本でもコアなファン層獲得の一翼を担ったことは想像に難くない。 何ともほっこりとした気分をどう言葉にすればいいかだが、 とりあえず、「クー」といってほほえむだけで その場は和み、気持ちが通じるのがこの映画の面白さだ。

TRAFIC JACQUE TATIアート・デザイン・写真

ジャック・タチ「トラフィック」をめぐって

内容からすれば、おしゃれなコメディータッチのロードムービー風 とでも言えるのかもしれないけどね。 やっぱし、これは日本的ではない なんてーのか、インテリジェンス、ウイット、ユーモア ジャンルの型にはめようとすると限界があるんだけど ぼくはそれを「ユロビートムービー」と名付けよう。 オフビートタッチのロードムービー、うん、ま、そんなところ。