夜のにじみ
だんだん昼が短くなってきたと痛感する今日この頃。
まだまだ冬は来てほしくないと思うのだが、
昼間の暖かさから、我に帰るかのように、
朝夕のぐっと冷え込んだ温度に、なぜだがほっとするのはなぜだろう?
昼に聞く虫の音と夜のそれではまったく違うのだ。
どこか、太古の記憶さえ地続きで引っ張り出されそうなほどに
秋の夜は、どこか記憶の奥深くに通底しているように思えてならない。
さて、夜は大人たちの開放の時刻。
そうありつつも、ぼく自身は、昔ほど夜に出歩くこともなく、
ときに、人と会い、言葉を交わしたり酒をちびりと舐める程度はするが、
室内で過ごす事の方が好きな性分であることには変わりがない
が、それとて、別に夜を忌み嫌う理由ではない。
少々怖いほどの闇の広がりの前に、
子供の頃なら、少々畏怖していたものだが、
今では、夜というものが、思考の成熟には不可欠なものだという認識に
情緒的に浸かっている。
だれにも邪魔されない時間を静かに過ごしながら、
一編の詩のように、時間を縫って呼吸を整える。
そして、ラジオなり、音楽を聴きながら、自分の時間を過ごす。
秋の月はなんとも美しい。
秋の夜〜夜の裂け目ににじむ10曲 「にじんだ夜の物語」
Fishmans – ずっと前
Yo La Tengo – Green Arrow
Sade – Cherish The Day
Al Kooper – I Love You More Than You’ll Ever Know
Donald Fagen – New Frontier
佐藤奈々子 – 夜のイサドラ
七尾旅人 – どんどん季節は流れて
Rickie Lee Jones – The Moon Is Made of Gold
Tom Waits – (Looking For) The Heart of Saturday Night
EPO – DOWN TOWN
SONG LIST














美しい夕日を眺めていたのも束の間、いつの間にかすっかり夜の幕が降りている。遠い日の笑い声が、かすかに胸の奥で波打つ。なんとも切ない気分だ。ぼくはそれを忘れはしない。まるで儀式のように繰り返され、過ぎ去った時間はもう戻らないが、音が記憶を抱きしめてくれる。フィッシュマンズの音楽から聞こえるこの思いを抱きしめる。“ずっと前”の僕と、いまの僕が同じ呼吸をしていることに気づかされる瞬間。同時にかつて、そこにあったものがなくなっている。夜は大人びた魔術師のように、夜はその甘美さをクールにさらってひとりしけ込んでゆくのだ。