増村保造『曽根崎心中』をめぐって
そんな増村の最高傑作は、はて、何だろう? ふとそんなことを考えてみたが、優劣をつけるには思い入れが邪魔をする。 よって最高傑作うんぬんはこの際どうでもよい。 ここではまず、紛れもない傑作 近松の名作の映画化「曾根崎心中」を取り上げてみたい。
そんな増村の最高傑作は、はて、何だろう? ふとそんなことを考えてみたが、優劣をつけるには思い入れが邪魔をする。 よって最高傑作うんぬんはこの際どうでもよい。 ここではまず、紛れもない傑作 近松の名作の映画化「曾根崎心中」を取り上げてみたい。
それほどのことまでをしでかしての危険な恋愛沙汰ゆえに この話は、当時の大衆の胸を打ったに相違なく、 当然、都の民衆たちの耳に入らぬ訳も無く それを西鶴の方は、この姦通譚を 男女の情愛のもつれに重きを置いたが、 近松は、むしろ悲哀としてとらえ 浄瑠璃にして、世評を博したのを下敷きにしたものを、 依田義賢がその両者の間をとって脚本を書いたのが この映画版『近松物語』である。