市川崑『黒い十人の女』をめぐって
海岸で、10人の女に糾弾され海に放りこまれるのは あくまでマゾヒスティックな男にとっての悪夢だが、 ここでの黒いシルエットのモダニズムこそが 『黒い十人の女』の真のかっこよさに通底している。 岸恵子のクールビューティーを見よ。 山本富士子の聡明なる悪女っぷりをはじめとして、 その他、岸田今日子、中村玉緒、宮城まり子と 色とりどりの個性的な女優陣が囲んで、 実にスリリングな愛憎劇を展開しているが、 最後の最後まで、軽さの美学に貫かれているところが 今日、再評価され人気も高い理由なのかもしれない。