ベルイマン『秋のソナタ』をめぐって
寄り添うをとすればするほど交わりはしない不毛な関係だが それでも母と娘であることは避けることのできない現実である。 娘は娘として、母は母として、 互いの空白を埋めることができるのか? ラストシーン、娘は母を許すことができたのか? 何もかも失いつつある現実の前で、 過去を清算して、娘に寄り添えるのか? 観客は各々感性にヒリヒリと問題を突きつけられるのだが、 『秋のソナタ』はそんな生易しいヒューマンドラマではない。 人間の根源、深層にまで及ぶ芸術家ベべルイマンの魂が 隅々にまで昇華された映画である。 スヴェン・ニクヴィストの冷徹なるカメラワークが冴え渡る。