アルベルト・ジャコメッティという彫刻家
もっとも、ジャコメッティといえば、 あの病的なまでの細身の像を作り続けた彫刻家としてのイメージから、 ややもすれば、気難しく、命をすり減らすかのように、 探究心あふれる孤高の芸術家として生きたような錯覚を、どこかで持っていた。 確かに、完成することよりも、完成しようとする意志に貫かれて、 創造と破壊を繰り返した“完全主義”という一面こそ持ち合わせていたが、 生涯において、他人を寄せ付けず、 孤独なうちに野心ついえたようなタイプの芸術家とは、 根本的に違っていたのである。