長沢芦雪という画家
そんな波乱万丈の生涯を送った芦雪だが、 残された絵の腕前には唸らされる。 とりわけ270点にもおよぶ作品を残した 南紀滞在での充実期の、 その代表が「虎図」であり「龍図」である。 中には晩年「山姥」のようなグロテスクな作風もあれば 大の犬好きであったこともあって 「白象黒牛図屏風」の横たわる大きな牛のふところに ちょこんと佇むミニュチュアの子犬をはじめ、 現代でも人気を博すようなかわいい犬の絵も散見している。 そんな芦雪のことを想像すると、必ずも悪い人間だと思えなくなってくるし 憎めずふと愛おしさが募ってくる、そんな不思議な魅力があるのである。