田中絹代

溝口健二 1898-1956映画・俳優

サロン De 溝口健二

溝口映画を見終わったあとは、どっと疲れる。 実に重いのだ。 そう簡単には他人に勧められない重みがある。 同時に、その充実感、鑑賞の醍醐味は他にないものがある。 食い入るように見てしまうのだ。 やはり、これぞ巨匠の名にふさわしい格、そして魂に響く何かがあるのだろう。 その意味で、日本の映画史において、 ひとり好きな監督と言われれば、成瀬巳喜男といいたいところだが、 ぼくがもっとも敬愛する監督といわれれば、溝口健二なのである。 当然、その思いは映画作品を通して培ってきた感覚に他ならないが、 ここで語りたいのは、巨匠溝口の功績ではなく、 人間溝口を踏まえた映画作家溝口健二としての魅力なのだ。

彼岸花 1958 小津安二郎映画・俳優

小津安二郎『彼岸花』をめぐって

『彼岸花』には、別段、それまでの小津スタイル、 そのテーマと違いがあるわけではない。 とはいえ、つとに洗練された印象がするのは、 あらゆるところに無駄がなく、 何より、嫌味なく、すべてが完璧に流れてゆく熟練の間合いで 究極に、形式と情感の間にみごとな融合がなされるという意味では、 小津映画のひとつの完成形を見る思いがするのだ。 どの作品も甲乙つけ難い魅力がある小津映画のなかでも、 この『彼岸花』がなかんずく大好きなのである。

前略おふくろ様サブカルチャー

『前略おふくろ様』をめぐって

人と人を結んでいる不確かなものを 確かにしていくというのが このドラマの実態だとするならば、 その正体こそが紛れもなくそこにあるのだと 実感するからであり、 『前略おふくろ様』は、 時代と俳優とスタッフによって生み出された 今絶滅危惧種のようなドラマであることはまちがいなく、 その昔、こんないいドラマがあったことを 僕は嬉しく思うし、 自分にも、また自分のおふくろさんにも 輝くような青春があったということを 今一度思い返すのであります。