成瀬己喜男『晩菊』をめぐって
成瀬といえば『浮雲』が代表作にして最高傑作との評価はあるが 掘ってみれば、なかなか良作が他にも目白押しの監督で、 個人個人の好き嫌いをためらわずにいえば この『晩菊』なんかもあの『浮雲』に 負けじ劣らぬ傑作然としているのがわかる。
成瀬といえば『浮雲』が代表作にして最高傑作との評価はあるが 掘ってみれば、なかなか良作が他にも目白押しの監督で、 個人個人の好き嫌いをためらわずにいえば この『晩菊』なんかもあの『浮雲』に 負けじ劣らぬ傑作然としているのがわかる。
東京の実家に舞い戻った原節子を訪ねてくる上原謙と ふとしたきっかけで仲直りをし、 再び大阪へ帰阪する車中のシーンだ。 三千代は初之輔に書いた手紙を結局窓から破り捨てる。 その横で、夫はまた以前のような姿で疲れ惚けて眠っているが、 妻はその時すでに、覚悟を決めて、生活そのものを受け入れるだけである。 不本意ではあるが、それはそれで、女の幸せとは 所詮そんなものだという諦めの境地が、 この大女優のくたびれ顔に 一筋の光を照らすなんとも感慨深いシーンなのである。