ロマン・ポランスキー

フランソワーズ・ドルレアック映画・俳優

フランソワーズ・ドルレアック小論法

伝説と呼ばれしものは、永遠に燃え上がるために、この世を早く去る。 そんな格言めいたことばを、ふと呟きたくなるひとりの女優がいる。 彼女の名前はフランソワーズ・ドルレアック。 いうまでもなく、妹は歳は一つ違い、 フランス映画界の大女優カトリーヌ・ドヌーブ、その姉として名が刻まれている。 世間広しといえ、ぼくにとって、美しい姉妹といえば 映画史のなかで、この二人以上に比較しうる存在がいない。 さらにいえば、ぼくは圧倒的なまでに姉ドルレアック派なのである。

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.21特集

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.21

そこで、今回は、映画作りにおいて 監督兼俳優、ひとりでとりしきる孤高の映画作家を特集してみようと思う。 ひとよんで二刀流映画術。 むろん、映画など、とうていひとりでできるものではないし、 監督と俳優を兼ねるから、出来のいい映画が出来るわけでもない。 それがウリになるほど甘いものではないのだが、 うまくいけば、すべてその二刀流作家の勲章になり こければ、すべての責任が覆い被さってくる。 まさに自己責任である。

Repulsion 1965 Roman Polanski映画・俳優

カトリーヌ・ドヌーブスタイル『反撥』の場合

ロマン・ポランスキーの『反撥』は オープニングから、不安に怯えるドヌーブの大きく見開いた目が 恐怖を誘導してくる。 まるでヒッチコックのサスペンスのように扇動的だ。 だが、ホラーでもスリラーでもなく、 むしろ“恐怖という現象の内部に入り込んだ映画”というべきであり、 外界が主人公を脅かす、そんなあからさまな悪は一切出てこない。 彼女自身の内側で膨張し、伸び、ひび割れ、世界を侵食していく何者か、 その異様な力学によって、古いアパートの一室は、 人間の精神の奥深くに開いた “暗い裂け目”のような空間へと変貌する異質な映画だ。