ロマン・ポランスキー

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.21特集

ロピュマガジン【ろぐでなし】vol.21

そこで、今回は、映画作りにおいて 監督兼俳優、ひとりでとりしきる孤高の映画作家を特集してみようと思う。 ひとよんで二刀流映画術。 むろん、映画など、とうていひとりでできるものではないし、 監督と俳優を兼ねるから、出来のいい映画が出来るわけでもない。 それがウリになるほど甘いものではないのだが、 うまくいけば、すべてその二刀流作家の勲章になり こければ、すべての責任が覆い被さってくる。 まさに自己責任である。

Repulsion 1965 Roman Polanski映画・俳優

カトリーヌ・ドヌーブスタイル『反撥』の場合

ロマン・ポランスキーの『反撥』は オープニングから、不安に怯えるドヌーブの大きく見開いた目が 恐怖を誘導してくる。 まるでヒッチコックのサスペンスのように扇動的だ。 だが、ホラーでもスリラーでもなく、 むしろ“恐怖という現象の内部に入り込んだ映画”というべきであり、 外界が主人公を脅かす、そんなあからさまな悪は一切出てこない。 彼女自身の内側で膨張し、伸び、ひび割れ、世界を侵食していく何者か、 その異様な力学によって、古いアパートの一室は、 人間の精神の奥深くに開いた “暗い裂け目”のような空間へと変貌する異質な映画だ。